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【U-20W杯で考える】まるで甲子園初出場の公立校のよう。ベトナムが見せた清々しくも熱狂的な戦いぶり

カテゴリ:連載・コラム

熊崎敬

2017年05月23日

2000人以上のベトナム人ファンが大声援を送り続けた。

歴史的な舞台に立つ自国チームにファンも熱狂的な声援を送った。(C) Getty Images

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 大会3日目は水原からバスで1時間の街、天安でフランスとホンジュラスの一戦を見た。この1試合を見て、水原に帰るつもりでいた。だが急遽、予定変更。その後に行なわれたベトナムとニュージーランドの2試合目も見た。
 
 理由はふたつある。
 フランスが3-0で勝った1試合目が順当すぎて、物足りなかったということ。
 もうひとつは、2試合目に向けて予想外に多くのベトナム人がスタジアムに詰めかけてきたからだ。これはいいものが見られるかも……。そんな気がして2試合目も付き合ってみた。
 
 我ながら、いい判断でした。帰りが遅くなり、水原への帰路は綱渡りとなったが、期待以上のゲームが見られたからだ。
 
 2試合目は、はっきりいって泡沫対決。サッカーそのものへの期待は低い。だが初出場国ベトナムは、甲子園初出場を果たした公立高校のようにひたむきに戦い、全力を出し尽した。
 アルゼンチン、ウルグアイ、イタリア、フランスと連日、(日本人からすれば)大人のようなサッカーを見ていた目に、それはとても清々しく映った。
 
 スコアは0-0。ゴールはひとつも生まれなかった。だが、内容で勝っていたのはベトナムである。
 
 スタメンの平均身長は、172センチのベトナムに対して、NZは183センチ。ベトナムには159センチや161センチの選手もいる。試合前の練習で着たビブスがぶかぶかで、まるで子どものようだった。
 
 だがベトナムは、この小さな体格を生かしたプレーを見せた。
 休みなくピッチを走り回り、ボールを持つと迷わずつっかけ、敵の懐に潜り込んでは深い切り返しを見せる。
 いちばん輝いていたのは161センチのMFルオング。その疲れ知らずで勇敢で小技の効い動きは、小錦を振り回す舞の海を見るかのようだった。
 
 後半はNZのロングボールに苦しめられたが、カンポスより小さな168センチの守護神ブイが懸命のパンチでゴールを守り抜いた。
 
 ベトナムはとてもいいプレーを見せた。だが、プレーに負けないほど印象に残ったのがファンである。
 
 スタンドを真っ赤に染めた2000人以上のファン、その大半は韓国に暮らす出稼ぎのベトナム人たちだった。彼ら彼女たちは椅子もあるのに、最後まで立ちっぱなしでチームに声援を送り続けた。
 
 スマホで動画を撮りながら、故郷の家族や友人に実況しているファンも少なくない。
「俺はいま、すごいものを見ているんだよ!」
 その興奮を届けているのだ。
 
 つまり、ベトナムにとってU-20ワールドカップは歴史的な舞台。ファンはベトナムがクリアするだけで大喝采を送り、ピンチを迎えると悲鳴を上げ、終盤の決定機を逃した瞬間に跳び上がったり、ひっくり返ったりして悔しがった。こんなに楽しい90分はないだろう。いいなあ、羨ましいなあ。
 
 ベトナムの夢は続く。勝点1の次は1点だ。あの強いフランスからそれを奪った日には、ベトナム人たちは狂喜乱舞するに違いない。そうなったらいいな、と素直に思う。
 
取材・文:熊崎 敬(スポーツライター)
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