森谷の「やってやろうという気持ちでいた」の想いが、出場から3分後に結実する。
この日のヒーローは、出場から3分で大仕事をやってのけた。
第2ステージ9節の浦和対川崎は、文字どおりの頂上対決だった。同ステージ1位の浦和と2位の川崎、年間勝点1位の川崎と2位の浦和が激突。チャンピオンシップさながらの緊張感のなか、試合は後半途中まで1-1と一進一退の攻防が続いた。
流れを変えるきっかけとなったのは、いわばアクシデントだった。
71分、左ウイングバックで先発した中野嘉大が足をつって倒れ込むと、チームメイトから「交代」の合図がベンチに送られる。それを確認した風間八宏監督は、間髪入れずにアップ中の森谷賢太郎を呼んだ。
急きょ投入される形となった森谷だが、並々ならぬ想いでピッチに入ったという。
「(トレーニングでは)Aチームに入れてもらっていたけど、それで(試合に)出られないというのは、自分に何かがあるのかなと思っていた。その分、エネルギーが溜まった。今日は久々に出たら、やってやろうという気持ちでいた」
71分に投入されるや、わずか3分後に森谷の想いが結実する。川崎が中央から打開を試みると、こぼれ球に反応した大島僚太から素早く横へ展開。エリア内でボールを受けたエウシーニョが、DFの間を通すように絶妙なラストパスを通す。
浦和の守備組織をかいくぐるように、ひとりの選手が猛然とゴール前に走り込み、決勝ゴールを決めた。それは、大久保嘉人でも小林悠でもなく、3分前に投入されたばかりの森谷だった。
「僕がクローサーの時も、あそこ(のスペース)に入れようと考えているので、上手く走り込んだらボールが来た」
最終的に、この一撃が勝負を決定づけた。