【連載】週刊サッカーダイジェスト・メモリアルアーカイブ その2――1993年11月17日号

カテゴリ:特集

サッカーダイジェスト編集部

2015年02月16日

Jリーグ効果で成長した守備陣、それを享受できなかった攻撃陣。

失意の帰国を果たした選手たちを、多くのファンが温かく出迎えた。先進国であれば、厳しい視線と声が向けられるところだが……。

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 本誌では、さらにこの最終予選、さらにはオフト体制の約2年間を総括。ほとんどのメディアが「ありがとう、日本代表」という論調に包まれる中で、冷静かつ厳しく問題点を探っている。
 
――「Jリーグ効果でワールドカップに行ける」
 
 戦前、世間一般はこんなムードでいっぱいだった。本誌は、そうした風潮にシニカルな視点で接してきたつもりだが、それでも、日本サッカー界に漂う勢いを信じていたことは否めない。
 
 甘かった。巨大な底辺を持つサッカーというスポーツの世界では、一国にプロリーグができたかどうかなど、そしてJリーグ人気など、何の意味もなかった。それが、ワールドカップ予選というものの本質だった。
 
 それでも、Jリーグ効果はあった。韓国戦を2日後に控えた10月23日のことだった。練習を終えた柱谷がこんなことを言っていた。
 
「今まで韓国には勝てなかったけど、今度は負ける気がしないんですよね。あのチームより、アントラーズの方が強いもん。アルシンドみたいに馬力があって速い選手、ここにはいないでしょ」
 
 この予選、日本は5試合で4失点しか喫しなかった。世界各国から集まった一流のストライカーとJリーグで対決してきたことにより、日本守備陣の実力は確実に上がっていたのだ。
 
 しかし、攻撃の選手には何があっただろうか。柱谷はアルシンドと戦ったが、カズは、ラモスは、誰と戦ったのだろうか。戦ったことが誇りになるような選手と、Jリーグで対戦してきただろうか。否である。
 
 いまのJリーグには、代表歴を持つ守備の選手がほとんど来日していない。日本のアタッカーたちは、Jリーグ効果を享受することなく戦い、そして敗れたのだ。――
 

――オフトが監督に就任した頃の日本サッカー界は、赤子のような状態にあった。彼は、赤ん坊に言葉を教えるように、アイコンタクト、トライアングル、ディシプリンといったサッカーの基礎知識を、無知な日本サッカー界に教えていった。
 
 オフト監督は、とびっきり有能な、幼児のための教師だったのだ。日本は彼から“サッカー語”のイロハ教わった。だが、いくらイロハの教え方がうまかったからといって、ジョークの教え方までうまいとは限らない。
 
 オフトは日本代表の監督になる以前、マツダ(現サンフレッチェ広島)で指揮を執っていたことがある。日本代表選手がひとりもいなかったマツダは、彼にサッカーのイロハを教わったことにより、日本リーグ1部に復帰した1年目、センセーショナルな活躍を披露した。
 
 しかし2年目、マツダの勢いは完全に消える。オフトのやり方が徹底的に研究されたこともあり、マツダは12チーム中11位という成績で、2部に転落した。
 
 オフト監督は、日本サッカーにディシプリン(規律)という言葉を教えた。ただ、規律の次に来るもの、オリジナリティ(独創性)の発揮については、ついに教えることができなかった。
 
 こんな言い方はできないだろうか。
 
「オフト監督は代表に規律をもたらしたが、いつしか規律は拘束(リストリクト)に変質してしまった」
 
 チームに規律を要求するあまり、選手たちから自由な発想を奪ってしまった。規律ではなく拘束だったからこそ、最終選手の残り15分で、日本は「なりふり構わないサッカー」に切り替えることができなかったのだ。
 
 オフト監督はよくやってくれた。日本代表があそこまで行けたのは、彼の力があったからこそである。今後、日本のサッカー界は、ヨハン・マリウス・オフトの名を恩人として語り継いでいかなければならないだろう。
 
 ただ、この先も彼に“案内人”を任せるのは、あまりにリスキーである。こんなことは言いたくはいいたくない。だが、言わざるをえない。
 
「ありがとうオフト監督。でも、あなたはもう限界だ」――
 
 
※本項における選手やチーム名の表記は当時のものを記載。本連載は不定期で更新。

楽観的な見方やオフト監督への過剰な信頼など、本誌も含めたメディアの姿勢にも言及。果たして、その反省は現在に活かされているだろうか……。

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