【インタビュー】西村雄一主審が語る、議論を呼んだW杯開幕戦「判定の真実」

カテゴリ:国際大会

矢内由美子

2014年08月22日

「今回の開幕戦で得られた経験は、本当に貴重なものでした」

開幕戦以降、主審の割り当てがなかった西村氏は、3位決定戦の第4審判がW杯での最後の仕事となった。(C) Getty Images

画像を見る

――開幕戦で大会全般の方向付けをするという本来の趣旨については?
「FIFAは選手に対しホールディングをしっかり取ることを強烈に伝えられたので良かったと思っています。それにより大会全体を通じてホールディングは少なかったので、それがグループリーグの得点数増加につながったのかもしれません。ただ、決勝トーナメントではホールディングも辞さない場面が増えたため、点が入りにくくなりましたね。ホールディングは選手が練習してきた成果を出しにくくするファウルなのだと思います」
 
――ところで、準々決勝のコロンビア対ブラジル戦で、スニガ選手がネイマール選手を骨折させたプレーについてはどうお考えですか?
「このゲームでは、前半にカードは出なかったのですが、スニガ選手がフッキ選手にタックルするシーンがありました。膝に足の裏が入っていて、よく折れなかったなというシーンでした。その時点でかなりラフなアプローチが多かったので、そうした流れを把握しながらゲームマネジメントをしていかなければいけなかったと思います。ただ、この試合には準々決勝という難しさもありました。グループリーグ以上に、警告や退場が次の試合に与える影響が大きくなる。そういった面を考慮して、カードを控えた部分はあったと思います。ネイマール選手が怪我に至ったプレーに関しては、膝が背中に入ったことは主審の位置からは見えていません。しかもネイマール選手がトラップして落ちたボールは、ブラジルが良い状況で前に運んでいる。主審はファウルそのものは認識しているのですが、詳細を把握していないので、ブラジルのチャンスとしてプレーを続けさせたわけです。あの場面では主審は自分の目で見た最大限のことはしたのですが、VTRで確認したら違ったマネジメントが必要だったということだと思います」
 
――最後になりますが、ブラジル大会を通じて感じたことは?
「FIFAのワールドカッププロジェクトの一員として参加できるのはブラジル大会まででした。複数の試合で笛を吹くことを期待して頂いた方々には残念な思いをさせてしまい、心より申し訳なく思っています。一方、今大会でFIFAが期待するベテランの立場としてやるべきことはできたのではないかと思います。そして今回の開幕戦で得られた経験は、本当に貴重なことでした。このような経験は、普通に大会を終えていたらできません。いろいろと考えさせられたほうが自分の成長につながります。今回の件が象徴するように、レフェリーの置かれている状況は年々難しくなっています。そのなかで我々は、サッカーを盛り上げるためにどのように貢献していけるのか。サッカーを支える者として、新たなチャレンジのきっかけをもらったと思っています」
 
取材・文:矢内由美子(フリーライター)
【関連記事】
ブラジルW杯が開幕 ネイマールの2ゴールで逆転 ブラジルが白星スタート!
ドイツ 1-0 アルゼンチン|若き名手の一発でドイツが優勝! “南米大陸”で24年ぶり4度目の世界制覇
【W杯 検証】ドイツはなぜ優勝できたのか――代表番記者が振り返る
メッシも、アグエロも――新生アルゼンチン代表メンバー発表。W杯からの継続路線で決勝の相手ドイツと9月3日に
【日本代表 識者コラム】就任会見から読み解くアギーレ新体制の可能性

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 王国の誇りを胸に
    4月10日発売
    サッカー王国復活へ
    清水エスパルス
    3年ぶりのJ1で異彩を放つ
    オレンジ戦士たちの真髄
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 特別企画
    5月1日発売
    プレミアリーグ
    スター★100人物語
    絆、ルーツ、感動秘話など
    百人百通りのドラマがここに!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 完全保存版
    1月17日発売
    第103回全国高校サッカー選手権
    決戦速報号
    前橋育英が7年ぶりの戴冠
    全47試合&活躍選手を詳報!
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ