【インタビュー】西村雄一主審が語る、議論を呼んだW杯開幕戦「判定の真実」

カテゴリ:国際大会

矢内由美子

2014年08月22日

「ビデオ判定があったとしても、最終的には主審の判断に委ねられたのではないか」

『程度』に関係なく、ホールディングの『行為』をファウルとした西村氏のジャッジをFIFAは支持した。(C) Getty Images

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――シミュレーションとジャッジしていたら誤審だったのですね。では、緊迫した試合展開であることを考慮して、流すという選択肢はどうだったのでしょうか? 杓子定規だったのでは、という見方もありました。
「もちろん、杓子定規という意見も尊重します。なぜなら、見ている人のそれぞれの立場によって感じ方が違いますし、杓子定規を好む方もいれば好まない方もいらっしゃいます。様々な意見があって、そしてそれを議論したり批判したりすることもサッカーの楽しみ方に含まれると思っています。『レフェリー』という、両チームから難しい状況の判断を委ねられた者として、現実に起きたこととルールをつなぐという役割を担っている者として、見たものをそのまま正直に判定しました」
 
――FIFAの見解は?
「FIFAは『このジェスチャーを見たらレフェリーはホールディングとして判断する』との見解でした」
 
――よく見える位置にいて、正しく見て、正しく判断したからこそ起きた議論と言えますね。
「結果としてそういうことだと思います。もし仮にDFの左手が見えない位置やフォーカスがDFの左手に合っていない場合には、判定不能で笛を吹いていませんでした。そして、VTRで確認して見落としに気づくことになり、なぜ見える位置にいなかったのか、なぜフォーカスが合わなかったのかと後悔したと思います。もうひとつ、もし仮にビデオ判定があったとしても、この場合は双方の言い分は割れて、最終的には主審に委ねられる難しい状況だったのではないかと思います」
 
――報道によると、クロアチアの選手が『審判は日本語を話していた』とコメントしていましたが。
「これに関しては特に気にしていません。選手には英語で説明しました。それはマイクを通じて副審や第4の審判員(※イラン人)も聞いています。もしかすると、試合中にマイクを通じて副審と日本語で話しましたから、その日本語が聞こえたのかもしれませんしね。とにかく選手が興奮している状況での出来事ですので、大したことではありません」
 
――今回はブラジルという特別な国での開幕戦だったからこそ、反響が大きかったかもしれません。
「FIFAもそう思っていました。開幕戦でなければ問題にもならなかっただろう。なぜ、こんな問題になってしまったのか。FIFAも困っていました」
 
――FIFAのマッシモ・ブサッカ審判部長は「西村の判定を支持する」とコメントしていました。
「マッシモ部長は開幕戦の翌朝のブリーフィングで『FIFAは西村の判定を支持する』と言ったのですが、すでに半日間で私は批判に晒されている状態になっていたので『FIFAは批判されている西村を擁護する』というニュアンスに変わって報道され、判定そのものはグレーという扱いになってしまったのです」
 
――その後、西村主審を割り当てな かったのはなぜでしょうか?
「FIFAはいろいろと配慮してくれたのですが、やはり私には疑いの残ったまま大会が進んでいきました。開幕戦翌日の空港での出来事(※クロアチア人サポーターに威嚇された)や、6月20日のホンジュラス対エクアドル戦で第4の審判を担当した際も大きく報道され注目されてしまいました。ワールドカップは選手のためにある大会であり、FIFAは感動や希望を全世界に届けたいと思っています。なのに疑いを持たれている私がフィールドに出て、それを届けることができるのかということです。割り当てたくても割り当てられなかったというFIFAの判断は、私も受け入れられることでした」
 
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