【W杯決勝】ドイツ対アルゼンチン――過去2度の決勝戦を振り返る

カテゴリ:国際大会

サッカーダイジェストWeb編集部

2014年07月12日

4年前とは逆の立場で試合を支配し、雪辱を果たした西ドイツ。

本来のキッカーであるマテウスから決勝のPKを任されたブレーメ。この大会でMVP級の活躍を見せた左SBは、右足で正確にサイドネット内側に転がした。 (C) Getty Images

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 アステカでのアルゼンチンの戴冠から4年。再び因縁の両チームが決勝の舞台で顔を合わせた。西ドイツがファーストユニフォームをチョイスしたのは4年前と逆。そして決勝までの両チームの道のりもまた、前回とは全く逆だった。
 
 西ドイツはグループリーグを難なく突破し、決勝トーナメントでもオランダ、チェコスロバキア、イングランドという難敵に優勢を保ちながら競り勝ってきた。対するアルゼンチンは、開幕戦でカメルーンに敗れるという最悪のスタートを切り、グループリーグを3位で辛うじて突破。決勝トーナメント1回戦の対戦相手がブラジルと決まった時には、早々に帰国の準備をするサポーターもいたというほどだったが、マラドーナの一瞬の技でこの難敵を下し、準々決勝ユーゴスラビア戦、準決勝イタリア戦と連続でPK戦を制し、決勝に這い上がってきた。
 
 戦前の予想は西ドイツ有利。さらにアルゼンチンは、累積警告で多くの主力が出場停止処分を受けていた。なかでも、前線で快足を活かして走り回り、唯一マラドーナと息の合ったプレーを見せていたクラウディオ・カニージャを欠いたことは、アルゼンチンにとって致命傷とも言えた。
 
 試合はやはり、アルゼンチン陣内で大部分の時間が過ぎていく。ピエール・リトバルスキーが、アンドレアス・ブレーメが、ユルゲン・クリンスマンが、そしてフェラーが、流れのなかから、あるいはセットプレーから次々に惜しいシュートを放った。
 
 対するアルゼンチンは、頼みのマラドーナがギド・ブッフバルトに徹底マークされただけでなく、ボールを持つとさらに複数の選手に挟み込まれるという徹底包囲網を敷かれ、まともに攻撃を組み立てることができない。それでも、一度だけその突破からチャンスを生みだし、ペナルティエリア右手前という格好の位置でFKを得たが、魔法の左足から放たれたボールは、クロスバーの上を越える……。そしてこれが、この試合でのアルゼンチン唯一のシュートとなった。
 
 後半も、ひたすら西ドイツは攻め立てた。アルゼンチンは最終ラインで何とかはね返してきたが、65分にさらなる不利を強いられる。DFペドロ・モンソンがクリンスマンの足元にタックルを仕掛け、一発退場となったのだ。もちろんこれ以降、西ドイツの攻撃がさらに激化したことは言うまでもない。
 
 効果的な交代の駒も、攻め手のないアルゼンチンにとっては、何とか粘ってPK戦に持ち込むぐらいしか勝機は見出せなかったが、その望みも試合終了5分前、ロベルト・センシーニがペナルティエリア内でフェラーを倒した時点で、完全に消え去った。決勝点となるであろうPKのキッカーを任されたブレーメは、利き足でない右足でGKセルヒオ・ゴイコチェアを破った。
 
 87分、アウトオブプレーで強引にボールを奪おうとして西ドイツ選手に手を出したグスタボ・デソッティが退場となったアルゼンチン。決勝戦でふたりも退場者を出したのは初のことである。試合が殺伐とした雰囲気となったのは、主審エドガルド・コデサル・メンデスのコントロールの拙さと、選手の神経を逆撫でするような派手なジェスチャーも大きな要因のひとつだった。
 
 間もなくして試合は終了。4年前の雪辱を果たした西ドイツは歓喜の輪を作り、敗れたマラドーナはスタンドの大部分を埋めたイタリア人とドイツ人の観衆から容赦ない大ブーイングを浴びながら、悲しみの涙に暮れた。そんなマラドーナを、4年前は彼にしてやられたマテウスが慰める姿が何とも印象的だった。
 
 
1990年7月8日 20:00
スタディオ・オリンピコ(ローマ)
 
西ドイツ 1-0 アルゼンチン
 
得点:ブレーメ(PK)
 
西ドイツ:GKイルクナー、DFブッフバルト、コーラー、アウゲンターラー、ブレーメ、MFベルトルト(73分ロイター)、マテウス、ヘスラー、リトバルスキー、FWフェラー、クリンスマン
 
西ドイツ:GKゴイコチェア、DFロレンソ、セリスエラ、ルジェリ(46分モンソン)、センシーニ、MFシモン、バスアルド、ブルチャガ(53分カルデロン)、トログリオ、FWマラドーナ、デソッティ
 
退場:ア=モンソン(65分)、デソッティ(87分)

試合前の国歌斉唱。マラドーナは場内の巨大ビジョンを通して、敵意を見せる大観衆に汚い言葉を浴びせる。大ブーイングのなかで精神状態は正常でなかったことだろう。 (C) Getty Images

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