【W杯決勝】ドイツ対アルゼンチン――過去2度の決勝戦を振り返る

カテゴリ:国際大会

サッカーダイジェストWeb編集部

2014年07月12日

勢いづく西ドイツを奈落の底に突き落とした天才のラストパス。

マラドーナのスルーパスからブルチャガが決勝ゴール。世界一を決めたのは、ベストコンビによる以心伝心の連係プレーだった。 (C) Getty Images

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 1点リードで試合は折り返し、前半と変わらぬ展開で進む。56分、エクトル・エンリケのスルーパスで抜け出したホルヘ・バルダーノがシューマッハーとの1対1を制した時には、早くも「これで勝負あり」と誰もが思ったことだろう。
 
 しかし、ここで後がなくなった西ドイツが反撃に出る。それまで攻撃センスをいっさい発揮できずにいたマテウスが、マラドーナのマーカーの任を解かれ、前線には空中戦に強いディーター・ヘーネスが投入される。前線にターゲットができた西ドイツは、徐々にアルゼンチンゴールに迫っていった。
 
 再三のサイドのからのアプローチは74分に実る。ここから得たCKをカールハインツ・ルムメニゲが素早い反応でゴールに結びつけたのだ。さらにその7分後、同じくCKからルディ・フェラーがヘッドでGKネリー・プンピードの牙城を崩す。残り時間9分で、西ドイツが「ゲルマン魂」を見せつけた。
 
 完全に勢いに乗った西ドイツの選手たちに、ベッケンバウアー監督が声を張り上げて指示を送るが、大歓声にかき消される。これを試合後、指揮官は悔やんだ。指示の内容はこうだ。
 
「マラドーナに注意せよ」
 
 西ドイツは勢いのままに決勝点を取りにいこうとして、最も危険な選手の存在を忘れてしまっていた。その大きな代償を払わされたのは、同点劇からわずか3分後。マテウスのマークから解放されたマラドーナが、中盤でさりげなく左足で前方にパスを出す。その先には、西ドイツの最終ラインを抜け出して相手ゴールへ疾走するホルヘ・ブルチャガの姿があった。
 
 完全にフリーのブルチャガが放ったシュートが、飛び出したGKシューマッハーの脇を抜けてゴールネットを揺らすと、アルゼンチンはすでに勝利を確信。その時、ピッチ中央では多くの西ドイツの選手たちが片膝をついたまま、動くことができずにいた。
 
 試合後のスタジアムは宴の会場へと変貌した。黄金のトロフィーを手にした25歳の天才を中心に、アルゼンチンの選手が歓喜のダンスを披露。ウイニングランでは、チームメイトやスタンドから乱入したサポーターに肩車されたマラドーナの姿が、サッカー界に新たな王様が誕生したことを世界に印象づけた。
 
 
1986年6月29日 12:00
エスタディオ・アステカ(メキシコシティ)
 
アルゼンチン 3-2 西ドイツ
 
得点:ア=ブラウン(23分)、バルダーノ(56分)、ブルチャガ(84分) 西=ルムメニゲ(74分)、フェラー(81分)
 
アルゼンチン:GKプンピード、DFクシューフォ、ブラウン、ルジェリ、オラルティコエチェア、MFバティスタ、ジュスティ、エンリケ、ブルチャガ(90分トロビアーニ)、FWマラドーナ、バルダーノ
 
西ドイツ:GKシューマッハー、DFエデル、フェルスター、ヤコブス、ブレーメ、MFベルトルト、マテウス、マガト(62分ヘーネス)、ブリーゲル、FWルムメニゲ、アロフス(46分フェラー)
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