東福岡伝説の3冠…オートマチズムの完成と11人のスペシャリストたち(中編)

カテゴリ:高校・ユース・その他

川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

2017年12月27日

シンジが体調不良だったみたい。それがなかったら…

宮原(中央の紋付き袴!)の結婚式で教え子たちと記念撮影に収まる志波先生(中央手前)。20年以上が経過したいまも、“彗星”たちに慕われている。写真:佐藤香織

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 ヒガシの勢いは止まらない。インターハイを制した勢いを駆って、高体連の各地域王者とクラブユース勢が一堂に会する全日本ユースでも、快進撃を続けた。決勝であいまみえたのは、これまた攻守両面で逸材揃いの“キヨショウ”こと清水商だ。主将は、あの小野伸二である。
 
 結果はインターハイ決勝と同じ3-2での僅差勝ち。だが、志波監督は勝負強さを身に付けて逞しくなったチームの戦いを、終始安心して見られたという。
 
「あのときのキヨショウには太田(恵介)という大きなセンターフォワードがいた。とにかく彼を目がけてどんどん放り込んでくるわけだけど、あの試合では金古と千代反田が本当によく頑張った。太田がヘディングでほとんどアイツらに競り勝てなかったからね。あとは、シンジが体調不良だったみたい。それがなかったら、チンチンにやられてたかもしれません。ツイてたね(笑)」
 
 怒涛の2冠奪取。試合を重ねれば重ねるほど、攻撃の破壊力と守備の強度が高まる、バケモノのようなチームになっていた。だが、勝ち続けることで破裂しそうなほどに膨れ上がった周囲の期待にも苦しんだ。
 
 選手権予選2回戦の福岡大大濠戦、ガチガチで全体の動きが硬い東福岡は、後半途中まで0-2とリードを許す大ピンチ。なんとか終盤に追いつき、延長戦で突き放した。「そこはやはり高校生。相当なプレッシャーがかかってたんだろうね。あれを乗り越えたのは大きかった。その後の試合では、本来の力を発揮してましたから」と、先生が記憶を紐解く。
 
 そして迎えた第76回高校選手権。本山、手島、古賀誠のプロ行きが内定し、前人未到のトリプルクラウンが懸かる“赤い彗星”は、大会前から尋常ではない注目を集めていた。それでも彼らは颯爽と、包囲網をひとつずつ突破していく。
 
 偉業達成へ、着実に山を登っていく東福岡。逆のルートからは黄色いキットを身に纏った最大のライバルが、山頂に近づいていた。
 
<後編に続く>
 
取材・文●川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)
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