ディック記者は「セルティックではチャンスが多かったが、ここでは少なくなるだろう。スコットランドリーグのディフェンダーは、ゴール前で大きなスペースを空けてしまったり、マークを外してしまうということが多いが、イングランドではそのようなミスは少ない。ただ、キョウゴのオフ・ザ・ボールの動きとプレスは秀逸だ。唯一の問題は決定機をゴールにできていない点だ。今節も２回の決定機を逸している」と古橋のポテンシャルを認めつつも、ゴールという結果を強く求めた。

「キョウゴがセルティック時代で活躍できたのは単にスコットランドリーグのレベルのおかげだ」とイングランド人ファンの間で「ケチ」がつくのは仕方ないことかもしれない。ただ、チーム関係者は彼を焦らせるつもりはないようだ。

　クリス・デイビス監督は「キョウゴが昨季の後半にあまりプレーしていなかったことを考慮するべきだ。チャンスを作れていることが肝心で、これは良いサインなんだ。プレスやオフ・ザ・ボールの動きがチャンスを作り出している。ゴールは必ず訪れる」と期待を口にしている。

　試合後、前述のメディア・マネジャーが「２回の得点チャンスを逃したって日本語でなんて言うんだい？キョウゴをイジろうと思ってね」と冗談まじりに聞いてきたことからも、チームとして古橋のゴール欠乏を深刻に捉えていないように感じられた。
 

　60分で交代となった古橋の顔には不完全燃焼で悔しさをにじませていたが、現在の「アップデート」を進めていけば、バーミンガムの“セルティック化”も近い将来に現実となりそうだ。

　古橋の電撃的なバーミンガムへの移籍についても岩田は事前に相談を受けていなかったようで、「行くことにするって言っていた...あれどうだったかな？ でもどうしようかなって感じでもなかったですけどね。『プレミアに上がるためにキョウゴくんが来てくれたら心強いです』とは話しましたね。（なぜバーミンガムを選んだと思うか？）ウチはプレミアに上がる可能性がすごく高いチームですし、その前提でやっています。監督も面白いサッカーをやっているから来てくれたんですかね？　このあと本人に聞いてください（笑）」

　チャンピオンシップでは、メディアが選手に囲み取材をするための「ミックスゾーン」は用意されていない。当の古橋は岩田をはじめ他のチームメイトに気づかれることなくひっそりとスタジアムを後にしていた。

　セルティックでは、朗らかで、ポジティブな性格が人気を集めた古橋。バーミンガムでも彼の笑顔が多く見られることを祈りたい。

取材・文●Shun Ide

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