今シーズンの10ゴールにより、オーバメヤンはELの歴代得点王ランキングでもトップに躍り出た。通算31ゴールで2位のヘンリク・ラーション(セルティック・グラスゴーなどで記録)、30ゴールで3位タイのクラース=ヤン・フンテラール(シャルケ04などで記録)とラダメル・ファルカオ(現ラージョ・バジェカーノ)を上回る、通算34ゴールだ。
オーバメヤンの34ゴールの内訳は在籍していた順に、ボルシア・ドルトムントで8ゴール、アーセナルで14ゴール、バルセロナで2ゴール、そしてマルセイユで10ゴール。ELを「スモール・ヨーロッパ」と見立てると、オーバメヤンは「スモール・ヨーロッパのミスター」となっている。
オーバメヤンが作った成功の轍を辿りながら、マルセイユのサポーターたちは新たな夢を思い描く。それは17-18シーズン以来となるELでの決勝進出であり、その大会での初優勝だ。ちなみに17-18シーズンのファイナルは、0-3でアトレティコ・マドリーの軍門に降っている。
昨年夏にマルセイユに新天地を求め、入団1年目のオーバメヤンはここまで公式戦42試合に出場し、25ゴールを挙げている。昨シーズンのサンチェスをすでに7ゴール上回っている計算だ。しかも、今シーズン記録した1試合で2得点はすでに7試合を数える。彼のこの記録を上回っているのはパリSGのキリアン・エムバペ(10試合)、バイエルン・ミュンヘンのハリー・ケイン(10試合)、マンチェスター・シティのアーリング・ハーランド(8試合)といった超大物たちだけだ。
オーバメヤンは、03-04シーズンに32ゴールを挙げたディディエ・ドログバに迫る勢いでゴールを量産中だ。34歳となった現在も、世界最速クラスの時速36キロというトップスピードを誇るオーバメヤンは、ペナルティーエリア内に一気に走り込み、瞬く間に襲い掛かるコヨーテのようなストライカーのまま、ドログバの背中を追っている。
1シーズンだけ在籍した前所属のチェルシーでは、公式戦21試合に出場してわずか3ゴールと冴えない1年を送ってしまったが、マルセイユでは税込みの年俸が900万ユーロ(約13億9500万円)というクラブ史上屈指の高給取りに値する働きを見せている。
ブンデスリーガ(ドルトムント)で通算98ゴール、プレミアリーグ(アーセナルとチェルシー)で69ゴール、そしてリーグ・アン(リール、ASモナコ、サンテティエンヌ、マルセイユ)で53ゴールを記録し、得点王にも二度輝いている(16-17シーズンのブンデスリーガと18-19シーズンのプレミアリーグ)オーバメヤンは、ガセ新監督と並んで、マルセイユの復活に欠かせない大きな存在となっている。
■François VERDENET(フランソワ・ヴェルドネ)
著者プロフィール/地元のブザンソン大学とパリのジャーナリズム学院を卒業後、1993年に『フランス・フットボール』誌入社。2019年より『レキップ』紙に異動し、グラン・ルポルテール(取材記者最高位)としてフランス代表、マルセイユ、移籍関連を担当。カデ(15~16歳)のフランス代表歴を持つ。