長谷部アビスパ、“5年周期”に終止符。J1残留の舞台裏と、さらなる高みを目指す歩み

カテゴリ:Jリーグ

中倉一志

2021年10月18日

チームは完成形を見たわけではない

確かな手腕で福岡に新たな歴史を築いた長谷部監督。今後も攻守にわたり主導権を握ってアグレッシブに戦うチームを目指す。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 また綿密な準備という点では次に紹介する宮の言葉に象徴される。

「シゲさんは前日に試合のシチュエーションをイメージしながら、めちゃくちゃノートに書いていて、多分、それをもとに試合前のミーティングをしている。最近は特にシチュエーション通りのゲーム展開になることが多いので、選手もシチュエーション通りになるだろうと思って試合に臨んでいる」

 そしてなにより言動に嘘がない。最たる例が中2日で迎えた第26節の川崎戦だ。常々「うちのチームにはレギュラーはいない」と話すように、選手起用にあたってコンディションや組み合わせを優先させる長谷部監督は、絶対王者の川崎相手に前節から先発メンバー9人を入れ替えた。

 しかもフィールドプレーヤー全員がリーグ戦での出場機会が少ない選手だった。だがチームのパフォーマンスは落ちるどころか、今シーズンのベストゲームの一つとして数えられるプレーを披露。リーグ戦無敗記録を続ける川崎を1-0で破ったことは記憶に新しい。

 試合後、長谷部監督は「試合に出ることが少ない選手でも、いつ出てもいいように準備してくれている。そこは信頼して試合に出てもらう、試合で活躍してもらう、それがアビスパ福岡のやり方」と胸を張った。

 そうした繰り返しの中で生まれた一体感の強さと献身性の高さが、昨年から変わらぬアビスパの最大の強み。過去のどのチームよりも高いレベルにある。「5年周期を終わらせる」というクラブとしての必達の目標から逆算して作り上げられたチーム。シーズン前の下馬評は低かったが、ある意味、当然の結果と言えるのかもしれない。
 
 だが、チームは完成形を見たわけではない。長谷部監督が目指すチームは攻守にわたり主導権を握ってアグレッシブに戦うチーム。守備で主導権を握れる試合は増えたが、攻撃面にはまだまだ課題を残す。さらに言えば、今シーズンの目標は「勝点50以上、10位以内」。そしてクラブはJ1定着をステップ1として捉え、将来は地方都市にありながらJ1の強豪クラブとなって、最終的にはアジアへ出ていくチームを目指している。

 来シーズンは新たな目標から逆算したチーム作りが始まる。そんなチームは福岡の街に何を見せてくれるのか。期待は高まるばかりだ。

取材・文●中倉一志

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