広告収入が復活。Jクラブの経営も良化へ。
――サッカー界としても景気の本格回復が待たれますが、今後の日本経済の見通しはどうでしょうか?
「やはり、消費税導入の影響は大きく、せっかく上手く回り始めていた景気回復のサイクルを消費税が冷却してしまった面は否めません。
消費税ショックは、スポーツを含めたレジャー産業への支出にも大きな影響を与えたと思います。そのショックをいかに早く払拭できるか、さらにデフレから脱却できるかどうかが重要で、そのためには、6月~7月頃までに、消費税ショックで低迷した経済状況が底打ちしているかどうかが鍵になります。
為替動向や現在の株高傾向を見ると、企業にとってのプラス要因は早く出ているので、そんなに悲観しなくてもいいのではないかと思います。私自身は、楽観的に見ていますし、今年の夏以降に日本経済はかなり良くなるのではないでしょうか。海外の不安定要因はありますが、日本経済だけを見れば、夏以降は希望を持てる展開になる可能性はかなりあると思います」
――景気回復で、JリーグやJクラブの経営も改善していきますか?
「これまで、大きいところでは代理店や放送局が赤字覚悟でJリーグを支えてきた構造があり、小さいところでは、クラブ単位で、選手が低賃金を我慢して頑張ってきました。みんながお互いに我慢して努力してきた背景に、長い不況があったのは間違いありません。
今後、大企業が親会社のチームの経営状態は急速に改善していくはずです。Jクラブの親会社や、Jリーグに広告を多く出してくれるような大企業、自動車産業はその典型ですが、資産をドル建てで持っていて、負債は円建てです。つまり、この2年間、今も加速している円安効果で、大企業の多くが資産を増やし、負債を減らしています。
その結果、相当数の大企業が過去最高の収益、経常利益を出しています。企業収益が多くの企業で改善している状況なので、広告収入は確実に復活していくでしょう。広告収入が復活すれば、JリーグやJクラブの経営にプラスになるのは間違いありません。
楽観的に見れば、景気回復で、Jリーグ、Jクラブの経営が良くなっていくと思われます。ただし、地方のチームに恩恵が及ぶまでにはまだしばらくかかるので、ここ2~3年の動向を見なければいけないでしょう。
地方経済は、長く続いたデフレで相当に冷え込んでしまっていて、地方の人がサッカーにお金を使うことができる状態になるまでには時間がかかるかもしれません」
≪第2回に続く≫
解説:田中秀臣
PROFILE たなか・ひでとみ/上武大ビジネス情報学部教授。専門は日本経済思想史、日本経済論。リフレ派論客のひとりで、サブカルチャーにも詳しい。「日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉」(主婦の友社)、「AKB48の経済学」(朝日新聞出版)、「デフレ不況 日本銀行の大罪」(朝日新聞出版)など著書多数。
取材・文:石田英恒(スポーツライター)
「やはり、消費税導入の影響は大きく、せっかく上手く回り始めていた景気回復のサイクルを消費税が冷却してしまった面は否めません。
消費税ショックは、スポーツを含めたレジャー産業への支出にも大きな影響を与えたと思います。そのショックをいかに早く払拭できるか、さらにデフレから脱却できるかどうかが重要で、そのためには、6月~7月頃までに、消費税ショックで低迷した経済状況が底打ちしているかどうかが鍵になります。
為替動向や現在の株高傾向を見ると、企業にとってのプラス要因は早く出ているので、そんなに悲観しなくてもいいのではないかと思います。私自身は、楽観的に見ていますし、今年の夏以降に日本経済はかなり良くなるのではないでしょうか。海外の不安定要因はありますが、日本経済だけを見れば、夏以降は希望を持てる展開になる可能性はかなりあると思います」
――景気回復で、JリーグやJクラブの経営も改善していきますか?
「これまで、大きいところでは代理店や放送局が赤字覚悟でJリーグを支えてきた構造があり、小さいところでは、クラブ単位で、選手が低賃金を我慢して頑張ってきました。みんながお互いに我慢して努力してきた背景に、長い不況があったのは間違いありません。
今後、大企業が親会社のチームの経営状態は急速に改善していくはずです。Jクラブの親会社や、Jリーグに広告を多く出してくれるような大企業、自動車産業はその典型ですが、資産をドル建てで持っていて、負債は円建てです。つまり、この2年間、今も加速している円安効果で、大企業の多くが資産を増やし、負債を減らしています。
その結果、相当数の大企業が過去最高の収益、経常利益を出しています。企業収益が多くの企業で改善している状況なので、広告収入は確実に復活していくでしょう。広告収入が復活すれば、JリーグやJクラブの経営にプラスになるのは間違いありません。
楽観的に見れば、景気回復で、Jリーグ、Jクラブの経営が良くなっていくと思われます。ただし、地方のチームに恩恵が及ぶまでにはまだしばらくかかるので、ここ2~3年の動向を見なければいけないでしょう。
地方経済は、長く続いたデフレで相当に冷え込んでしまっていて、地方の人がサッカーにお金を使うことができる状態になるまでには時間がかかるかもしれません」
≪第2回に続く≫
解説:田中秀臣
PROFILE たなか・ひでとみ/上武大ビジネス情報学部教授。専門は日本経済思想史、日本経済論。リフレ派論客のひとりで、サブカルチャーにも詳しい。「日本経済復活が引き起こすAKB48の終焉」(主婦の友社)、「AKB48の経済学」(朝日新聞出版)、「デフレ不況 日本銀行の大罪」(朝日新聞出版)など著書多数。
取材・文:石田英恒(スポーツライター)