【鹿児島】サプライヤー契約なし。異例の新ユニホーム誕生の裏側とは

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2021年05月24日

売り上げは販売2週間で昨年の数字を超える

今季のスタジアムには例年以上にユニホームを着たサポーターの姿が。反響は上々だ。(C)KAGOSHIMA UNIED FC

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 新たなユニホームの反響は上々だ。徳重社長も「発表してみると、皆さんから良いリアクションをいただけまして、ああ、やって良かったなと実感できました」と笑顔を浮かべる。

 オーセンティックユニホームの売り上げは販売2週間で昨年の数字を越え、最終的には前年の2倍になる見込み。一昨年、J2を戦った際の数字をも上回る勢いだという。

 なによりスタジアムの光景にも嬉しい変化があった。徳重社長が続ける。

「スタジアムでユニホームを着ている方が増えたなと。それは我々が一番実感しています。コロナ禍で人数は限られますが、ウェアを着ている方がホントに増えたなと実感しているんです」

 これはクラブが目指す理想の第一歩である。
 
「地元の鹿児島の方に、ユニホームを着た方に、もっとスタジアムに来ていただきたいと常に考えていました。そして試合のない日でも、ユニホームを着ながら、ウォーキングしたり、買い物に行ったり、遊びに行ったり。例えば日本でもバルセロナのユニホームを着ている子どもは見かけますが、Jクラブのユニホームを着ている子どもは、そこまで多く見かけないのかなと感じています。

 だからこそユニホームをより手軽に、身近に。どうすれば手に取ってもらえるかというと、価格を下げることと、デザインに鹿児島らしさ、地元らしさを落とし込めるかが大事でした。そこにこだわっていたので、反響を感じられて嬉しく思っています」

現在、J3を戦う鹿児島。新たなユニホームを力にJ2復帰も目指す。(C)KAGOSHIMA UNIED FC

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 その点はJリーグの理念とも通じる。地域に根付き、クラブを愛する人々がスタジアムに、街に溢れる――。地域密着を掲げるJリーグの理想の姿であり、想いを共有できたからこそ、今回のプロジェクトは成り立った。今後は他クラブを含め、この輪をさらに広げていきたいという。

 もっとも悩みはある。鹿児島らしい独自のデザインを続けていくには、新たなネタを考え続ける必要があるのだ。ただしそれは“嬉しい悩み”でもある。例えば来年は、世界自然遺産への登録が勧告され、話題を呼んだ奄美大島らにちなんだデザインなど……そんな想像も膨らませることができるのだ。

「サポーターの方にも楽しんでいただきたいです。勝った負けた、昇格、降格だけでなく、クラブとサポーターの方がこういう話題でコミュニケーションできるのも重要だと思っています」

 そして徳重社長は改めて想いを口にする。 

「グッズ販売はクラブの経営にとって非常に重要なポイントです。クラブ独自でやるのは、なかなか難しい面もありますが、そこにしっかり手を付けてクラブの規模を大きくしていく。そのことがひいては、ファン、サポーターのためになると思います。鹿児島県民、約158万人。より多くの方に興味をもってもらい、ユニホームを手にしてもらえればと思います」

 ちなみに今回はトップチームのユニホームとともに、スクールやアカデミーのウェアも独自に制作。育ち盛りの子どもたちがサッカーを続けるには、成長によってサイズが合わなくなったり、トレーニングによって破れてしまうなど、その都度、新調する必要も生じるが、こちらもウェアの値段を抑えることで、安心にサッカーを続けられる環境作りを進めている。

 5月15日には、オーセンティックユニホームに続き、より値段の安いレプリカユニホームの販売も開始。今後もJリーグと手を取りながら、理想を目指していく。その熱量は周囲のクラブへも波及するはずだ。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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