【鹿児島】サプライヤー契約なし。異例の新ユニホーム誕生の裏側とは

カテゴリ:Jリーグ

本田健介(サッカーダイジェスト)

2021年05月24日

(株)Jリーグ、三菱商事ファッションと協力し、独自のユニホームを開発

2021年シーズンのユニホーム。“鹿児島らしさ”が表現されている。(C)KAGOSHIMA UNIED FC

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 ユニホームとサプライヤー。本来は切り離せない関係性だろう。ただ、2021年シーズンのユニホームに関して興味深い取り組みを行なっているのが、J3を戦う鹿児島ユナイテッドFCである。

 今季は特定のブランドとのサプライヤー契約を結ばず、(株)Jリーグと三菱商事ファッションと協力しながら、独自のウェアを着用しているのだ。

 新たなチャレンジの理由は、以前から抱えていたある想いだったと徳重剛社長は説明する。

「正直なところ特定のサプライヤーさんを付けずにユニホームを作るということが、良いのか悪いのか相当に悩みました。デザイン、発注、プリントなど、サプライヤーさんを通さずにできるのかと。

 ただ、コロナ禍で試合も行なえない期間もあったなか、将来のグッズ販売全体の戦略をどう考えるべきなのか、マーチャンダイジングを伸ばしていかなくてはいけないとの危機感がありました。そうしたタイミングでJリーグさんと話をすることができたんです」

 ユニホームといえば各クラブにおいて、グッズの主力アイテムである。ただ、どうしても値は張ってしまう。価格を下げ、多くのサポーターに手を伸ばしてもらうにはどうするべきなのか。そこで行き着いたのがサプライヤー契約を結ばず、安価にユニホームを作ることだった。

 2020年シーズン、鹿児島のユニホームスポンサーを務めたのはプーマだった。「クラブが成長するなかで大変お世話になってきました。だからこそ、そこが最大の懸念でした」(徳重社長)と、新シーズンはユニホームのサプライヤー契約を結ばないことに葛藤はあったが、誠心誠意、想いを伝え、新たな取り組みを理解してもらったという。現にプーマには今季もユニホーム以外のアイテムでサポートを続けてもらっている。
 

デザインで表現された薩摩切子。鹿児島を代表する美術工芸品である。(C)KAGOSHIMA UNIED FC

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 そうした背景を経て、スタートした新ユニホームの制作。実際に工程を踏んでみると、ハードルは高く、四苦八苦したという。それでも低価格とともに新たなメリットも見えてきた。それが独自のデザインだ。徳重社長は説明する。

「鹿児島らしさを表現できるデザインにこだわりました。今回は復刻35周年を迎えた薩摩切子の“切子ダイヤモンド”をデザインに加えたんです。そこは鹿児島のデザイナーさんの集団である『KUFC design plus.』に協力してもらいながら立案しました」

 その言葉通り、薩摩切子の特長である「ダイヤモンド・カット」や「ぼかし」をシャツ全体にあしらい、右胸にはANGUA(ブランド名ではなくシンボル。“A Never Give Up Attitude”の頭文字で構成し、『決して諦めない、不屈の精神』というアスリートの勝利に対する気持ちと、ファンのチームや選手を信じる気持ちをイメージしている)のロゴマークをプリント。

 襟部分には「PRIDE of KAGOSHIMA」の文字を入れ、島津斉彬公をはじめ薩摩切子に情熱を注いだ先人たちへの敬意、そして鹿児島の未来を切り拓くという意志を込めるなど、“鹿児島らしさ”を最大限に表現する一着となっている。

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