「結果を出なければ即解雇」のアルゼンチンから名将が生まれる理由は何か。先代から続く指導者育成に迫る【後編/現地発】

カテゴリ:ワールド

チヅル・デ・ガルシア

2021年05月10日

名将誕生に影響を与える「国民性」とは?

2002年W杯でアルゼンチンを率いたビエルサ。後ろに立つ選手たちの多くは、指揮官の影響を多分に受け、指導者キャリアを歩んでいる。(C)Getty Images

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 そのシメオネやポチェティーノに代表されるアルゼンチンの若手監督たちに共通している大きなポイントは2つ。1つは欧州でのプレー経験。そしてもう1つはビエルサかペケルマン、または両者から指導を受けた経歴がある点だ。2002年の日韓ワールドカップのアルゼンチン代表メンバーを例にとってみると、23人のうち指導者になった14人全てにその共通点がある。

 ヘルマン・ブルゴス(現ニューウェルス・オールド・ボーイズ監督)、ロベルト・アジャラ、ワルテル・サムエル(共にアルゼンチン代表アシスタントコーチ)、ポチェティーノ(パリSG監督)、マティアス・アルメイダ(サンノゼ・アースクエイクス監督)、ディエゴ・プラセンテ(U15アルゼンチン代表監督)、シメオネ(アトレティコ・マドリー監督)、パブロ・アイマール(U17アルゼンチン代表監督及びA代表コーチ)、クリスティアン・ゴンサレス(ロサリオ・セントラル監督)、エルナン・クレスポ(サンパウロ監督)、マルセロ・ガジャルド(リーベルプレート監督)、ロベルト・ボナーノ(パラグアイ代表GKコーチ)の他、ガブリエル・バティストゥータはホセ・チャモをコーチに従え、監督デビューに向けた準備中にある。

 また2002年大会のメンバー以外では、エドゥアルド・ベリッソ(パラグアイ代表監督)とガブリエル・エインセ(アトランタ・ユナイテッド監督)にも同様の共通点があり、この2人を含めた16人のうち9人(シメオネ、ポチェティーノ、アルメイダ、プラセンテ、アイマール、クレスポ、ガジャルド、ベリッソ、エインセ)がすでに監督として公式タイトルを獲得している事実もまた、前編で書いた「数だけではない」ことを明確にしている。

 今年1月、クレスポ監督率いるデフェンサ・イ・フスティシアがコパ・スダメリカーナを制覇した際、決勝でゴールを決めたSBアドニス・フリアスは、指揮官について「攻め上がりに消極的だった自分にいつも『君ならできる』と自信をつけてくれた」と話していた。

 クレスポが監督としてのキャリアをスタートさせた時、「ビエルサからは選手ひとりひとりとの接し方を学んだ」と語っていたように、彼らにとってビエルサやペケルマンから得た学びは、指導者としてのキャリアに間違いなく活きていると言っていい。
 
 そして、世界中で多くのアルゼンチン人監督が活躍する背景について、レスクリウは「国民性も大いに関係している」と断言する。

「我々アルゼンチン人は逆境に強く、いかなる状態からも問題を解決する能力に長けているうえ、とにかく負けること、妥協することを嫌う。そして、自信家で執念深い。南米でこのようなメンタリティを持っているのはアルゼンチン人とウルグアイ人だけだ」

 これは、筆者が以前「アルゼンチンからなぜ優れたストライカーが生まれるのか」というテーマについて取材をした時に得られた理論のひとつと全く同じもの。トップクラスの選手が育つ条件は、世界で通用する監督が生まれる条件にも共通していたのだ。

 女子プロサッカーの開幕に伴い、女性の資格保持者も増加傾向にあるというアルゼンチン。指導者のエリートを育てる国として、今後も注目を浴び続けることになるだろう。

取材・文●チヅル・デ・ガルシア text by Chizuru de GARCIA
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