「結果を出なければ即解雇」のアルゼンチンから名将が生まれる理由は何か。先代から続く指導者育成に迫る【後編/現地発】

カテゴリ:ワールド

チヅル・デ・ガルシア

2021年05月10日

試験を受けずに監督になったのは…

革新的なアイデアで世界屈指のチームを作り上げるビエルサ(左)やペケルマン(右)。彼らのような指導者たちを生み出す背景に何があるのか。(C)Getty Images

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 国立大学の一般的な専攻科目と変わらない頻度で、週3回の授業を3年間受講し、試験に合格した者に指導者のライセンスが与えられるアルゼンチンには、現時点で資格保持者が国内だけで1万5000人以上いる。これは人口1万人当たり約3.4人に値する数で、日本に置き換えた場合、4万人を超える人がプロチームの監督になれるライセンスを持っている計算になる。

 サッカー協会が認定するATFA(Asociación Técnicos del Fútbol Argentino=アルゼンチン・サッカー監督協会)のビセンテ・ロペス校(ディエゴ・シメオネやマルセロ・ガジャルドが卒業)のディレクターを務めるルイス・レスクリウによると、現役の間に受講する選手も多く、ATFA全59校のうち、1部リーグのクラブがある地域の学校には「ほぼ必ずと言っていいほど現役選手が何人か通っている」という。過去、試験を受けずに監督になったのはディエゴ・マラドーナだけだったそうだ。

 だからといって、「人気の職業」という言葉で括れるほど甘くはない。アルゼンチンで監督業を営むことは非常に厳しく、「結果を出せなければ即解雇される」という重圧はプロチームの監督だけに限られたことではないからだ。

 ホセ・ペケルマンはかつて、アルヘンティノス・ジュニオルスの下部組織で指導にあたっていた頃のことについて「ジュニアやユース世代から競争が激しいのは選手だけでなく監督にとっても全く同じ」とし、「いつ解雇されても収入源を失わないように、しばらくはタクシー運転手としての仕事を並行して続けた」と話していたほどだ。

【動画】多くのアルゼンチン人監督に影響を与えたビエルサが率いるリーズのサッカーはこちら
 下部組織のみならず、ジュニアチームでも試合での勝利が求められ、選手はもちろん、監督にとってもプレッシャーは重大だ。ペケルマンは結果よりもプロセスを重んじる指導者だが、「兎にも角にも結果が求められ、ジュニア世代から各カテゴリーに厳しい競争が存在することも、アルゼンチンで優れた指導者が次々と生まれる要因のひとつだろう」と語っていた。

 それでも尚、常に多くの人が指導者を志望する理由について、レスクリウは「半世紀以上も前から、先代が欧州で栄冠をつかみとる実例を見て来ている。子どもたちが欧州で活躍する選手たちに憧れるように、サッカー監督という職業に興味を抱く環境が出来上がっているからだ」と話す。

 シメオネやマウリシオ・ポチェティーノを見ながら、「自分もいつかは」と指導者を目指す若者がいても決して不思議ではない。先代から学び、刺激を受けた後継者たちが次々と育つ土壌が、選手だけではなく指導者のためにも出来上がっているのである。
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