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「監督とは教育者になること」シメオネやポチェティーノらアルゼンチンからなぜ名将が生まれるのか?その“源流”を辿る【前編/現地発】

カテゴリ:ワールド

チヅル・デ・ガルシア

2021年05月03日

海外からも受講者が? 指導者ライセンスの取得の仕組みとは

南米屈指の強豪サンパウロを率いるクレスポ。母国の中堅デフェンサで結果を残し、着実にステップアップを果たしている。(C)Getty Images

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 では、なぜアルゼンチンから優れた監督が輩出されるのか。結論から言うと、ひとつの明確な理由があるわけではない。だが、彼らに共通するポイントはいくつかある。その共通点を挙げる前に、アルゼンチンにおける指導者ライセンス取得の仕組みについて紹介したい。

 まず、アルゼンチンで監督になるためには、サッカー協会が認定するATFA(Asociación Técnicos del Fútbol Argentino=アルゼンチンサッカー監督協会)の指導者資格を取得する必要がある。

 ATFAは1963年、当時国内外でサッカーの指導にあたっていた有志たちによって「プロ監督としてのキャリアを守り、活動に格を与えるため」に創立された歴史ある養成機関で、国内各地に59校が設置されている。

 プロのトップチームで監督になるために必要な修業年間は3年。1年目に取得するのは14歳までのカテゴリーに値するジュニアサッカーの指導資格となるBライセンス及びCライセンスで、2年目には18歳までのユース指導資格となるAライセンスを取得。そして3年目にPROライセンスを取るとプロチームの監督就任が可能となる。このPROは南米サッカー連盟も認定する資格で、ATFAのカリキュラムを高く評価した同連盟が2018年から協定する形で定めたものだ。

 シメオネやガジャルドが卒業したATFAビセンテ・ロペス校のディレクターを務めるルイス・レスクリウは、「アルゼンチンにおける指導者養成は、あらゆる面において大学の専門課程と全く同じと考えて良い。年に数回受講するコースのようなものではなく、一般の教育機関と同様、毎年3月から12月まで10か月間にわたって週に3回の頻度で授業が行なわれるからだ」と語る。
 
 現時点での受講科目は11科目だが、世界のサッカーの流れに沿い、専門家たちによって常に内容が吟味され、科目そのものを増やすこともある。普通の学校と同じ修業制度を採っているのは、「サッカーの監督になるということは教育者になることを意味するからだ」という。

 本格的な養成機関であるATFAには海外からも生徒が訪れる。以前まではコロンビアからの生徒が多かったが、新型コロナ禍の影響でオンラインによる授業が行なわれている今は他の南米諸国、特にブラジルからの受講者が一気に増えたそうだ。

「近年ブラジルでは外国人監督を雇うケースが増えているが、同時に指導者を目指すブラジル人が海外で学ぶ道を選ぶケースも増えている。クレスポの影響でブラジルの人たちはますます『アルゼンチン人監督には何かあるぞ』と思っているのではないかな」

 レスクリウの言う「クレスポの影響」とは、今年2月中旬にブラジルの強豪サンパウロFCの監督に就任してから5月1日時点で8連勝中のエルナン・クレスポ監督を指す。彼は今年1月にアルゼンチンの中堅クラブ、デフェンサ・イ・フスティシアをコパ・スダメリカーナ優勝に導くと、サンパウロを率いてからも10勝1分1敗という快進撃を見せている。

 自身の思い描く監督像について「アンチェロッティ、モウリーニョ、ビエルサが私の師匠」と語るクレスポの活躍は、今後ますますアルゼンチンの監督養成術に興味が集まる要因になるかもしれない。

【後編へ続く】

取材・文●チヅル・デ・ガルシア text by Chizuru de GARCIA
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