攻撃面においては、１トップの大迫に２列目の鎌田と南野が近い距離感で絡むという変則１トップ＋２シャドーであり、伊東はなるべく右アウトサイドからウイングの動きに徹して、中央と右の間にあるハーフスペースを山根が使い、流れに応じて守田が加わるメカニズムだった。

　本職の左ウイングではない南野の特性を上手く出しながら、大迫を孤立させることなく鎌田の持ち味も出すという意味で、非常に良い関係ができていたが、そこは守備の分担もセットになっている。いざ守備に回った時に南野が左サイドハーフのポジションで固定してしまうと、カウンターや攻守が切り替わってから短時間で中央の前めに関わっていけない。

　ましてやボランチのウォン・ドゥジェがバックラインに落ちて組み立てに参加することが多い韓国に対して、大迫、鎌田、南野でプレッシャーをかけ、そこに守田と遠藤が連動していくには、左側の守備をある意味、捨てる必要がある。佐々木が１対２の状況を上手く請け負うことが生命線になっていた。

　こうしたピッチ上のメカニズムに関して、どこまでを森保監督が伝えて、どこからが選手のアドリブなのか全容は分からないが、ベースの部分で共通理解を高めながら、実際に蓋が開いてみて、相手の対応をセットにしたレベルの解決は選手が判断するという関係は、韓国戦からもかなり見て取れた。

　後半に向けても「おそらく韓国は何かしら変えてくるだろうとハーフタイムも話していた」と吉田が振り返るように、屈強なイ・ジョンヒョプを１トップに配置する４-２-３-１にも目立った混乱を引き起こされることなく対応できていた。
 

　今回は急造の“ゼロトップ”というある意味、他所行きの布陣で来た韓国に対して、あらゆる面で上回れたし、後半の戦い方は想定内のオーソドックスな形だったので対応もしやすかった。だが、より基本戦力が高く、戦術的にもプランA、プランB、同じシステムの中での立ち位置の変化などをハイレベルに使いこなしてくる相手には、こんなに簡単に行かないだろう。

　それでも限られたメンバー編成、短い準備時間やコミュニケーションの中で、相手にほとんど自由にやらせることなく、自分たちの良さも出せたという経験は次のモンゴル戦だけではなく、最終予選に向けてもひとつの積み上げになりそうだ。

取材・文●河治良幸

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