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【指揮官コラム】チェンマイFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|その言葉に込められた意味を読み取れば…

カテゴリ:特集

サッカーダイジェスト編集部

2015年04月21日

改めて痛感している言葉の力。

日々のトレーニングでも三浦監督は言葉の重要性を実感するという。試行錯誤を繰り返しながら、選手との距離感を模索する。写真:佐藤 明(サッカーダイジェスト写真部)

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 しかし、同じ挨拶でも、言葉の後に笑顔も見せるタイの「サワディーカップ」とは違い、日本の「こんにちは」はそこに気持ちが込められているのか、そうでないかで、まったく受け取られ方が変わってしまう。
 
「こんにちは」と言葉は交わしたものの、嫌々言っていたり、目を逸らして言ったり、または「うぃーす」みたいな返事をしたりする人もいる。僕はこのタイに来て、挨拶ひとつにも人としての力、つまり人間力に違いが生まれるのだなと感じた。
 
 人にはいろんな性格があるので、挨拶をするのが苦手な人もきっといるであろう。人見知りな人間にとっては挨拶も苦になるのかもしれない。だが、挨拶とはコミュニケーションを取る手段のひとつであり、単に「こんにちは」と言葉を交わせばそれが成立するというわけではないだろう。
 
「ご苦労様です」「お忙しいなか、遠くまで来て頂きありがとうございます」「いつまでの滞在になられるのですか」と、相手を思いやる気持ちを持つこと。これが挨拶でありコミュニケーションスキルなのではないか。
 
 今の日本の指導者が教えている挨拶は、果たして心のこもった真のコミュニケーションと言えるものだろうか。どこか義務的に、チームの約束事として“やらされている”挨拶になっていないだろうか。おそらくJリーグの方はこれを言いたかったのだろう、と気づいた。
 
 ただその一方で、考えてみれば僕自身、「サワディーカップ」という言葉にも、分からない部分がたくさんある。まずその言葉自体に、それほど深い意味はないという。日本では儀礼的な挨拶だけで済ませるところを、タイでは「サワディーカップ」と言った後に、笑顔を見せることによってその場の空気を和ませる。まるですべての問題が、その笑顔で解決されるかのようだ。
 
 日本語は、朝夕の時間帯や接する対象によって挨拶の言葉や言葉遣いが異なるように、同じ意味でも状況や立場、微妙なニュアンスの違いなどで言葉が変わってくる。それは挨拶だけではないだろう。日本人は実に多彩な言葉を操る人種なのだと、このチェンマイに来てつくづく思う。
 
 挨拶には喜怒哀楽があって良いものだが、いつでも何処でもどんな時でも、ニコっと笑って「サワディーカップ」。やはり国民性が現われている。
 
 タイ人が好む言葉に「マイ ペン ライ」というものがある。これは、「気にしないでいいから!」という意味だ。選手に「マイ ペン ライ」と言えば、すべて許してもらったと思われるくらいだ。
 
 落ち込まないように下を向かさないように、切り替えさせるために、「マイ ペン ライ」という言葉を使えば、彼らはそれを叱咤激励とは受け取らない。「マイ ペン ライ」は起きたことがチャラになるだけなのだ。忘れて良いということにつながってしまう。
 
「サワディーカップ」にしても、この「マイ ペン ライ」と近い部分があり、すごく良い挨拶だなと感じていた一方で、その裏にはどこか誤魔化しの意味が隠れているのではないかと思うようになってしまった……。
 
 ここで一言
「通訳をつけて監督をやりたかった」
 
 僕がチェンマイFCの監督を引き受けた理由のひとつに、言葉が通じない状況で監督をやってみたいという気持ちがあった。通訳を使って行なうモチベーションアップやコーチングは本来、自身で行なうそれとは違う。まずは言葉が通じないなかでチームをまとめ、選手のモチベーションを上げ、成長させることにトライしてみたかった。
 
 しかしそんなに簡単なことではない。試行錯誤しているがなかなか難しい。言葉とは本当に一語一語凄い力を持っていると改めて感じている。これからも「言葉」を大切にしていきたい。
 
 最後に「サワディーカップ(笑)」
 
2015年4月19日
三浦泰年
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