負けて得るものあるし、負けて成長することも多いのが人生だ。青森山田は昨年、選手権決勝で敗れて以来、一度も公式戦で負けたことがなかったという。
公式戦で何十連勝と続けてきたなかで、最後の大一番で山梨学院に負けてしまったのである。負けに慣れていない青森山田の選手たちはあの瞬間、どのような態度を取れば良いか分からなくなっていたように見えた。
当然のことだ……。負けに慣れさせてはいけない。勝利を目指さないスポーツがあったとしたら、魅力は半減してしまう。
負け方、負けた時の振る舞いを、ワザと負けて覚えることなど考えてもいないだろう。
ならば、負けを通して人間形成をする監督と、シーズン無敗で走り続ける監督では、「どちらの監督が良いのか?」と言えば、サッカーチームの監督である以上、勝ち続けるほうが良いに決まっている。
何故か? それはその方が難しいからだ。
負けるのは簡単。選手を放っておいてマネジメントもせず、遊ばせておけばいつでも負ける。しっかりマネジメントしてでも負ける時は負ける。だから青森山田は凄いことを目指して負けたのだ。
では、どんなサッカーをして勝ったかを語るなら、自分が監督になった時にやれば良いのだろうか。いや、それでは評論家や解説者、サッカーの記事を書く人が仕事にならない。だから監督は選手は書かれていること、言われたことを気にする必要はない。
そしてだからこそ、僕は正直に言う。今回の高校サッカーは面白くなかった……。つまらなかった。良い選手もいたのであろうか? もちろん全試合を見ているわけではない。テレビ解説者も甘かった。
ただ、決勝で激突した両監督ともに、自分たちは良いサッカーをやり遂げたという想いで、満足したことであろう。勝ったサッカーが良いサッカーである喜びを感じているであろう。
それで良いと言えば良い。コロナ禍で影響が大きく出た大会だったのかもしれない。
だからこういう状況の中でよくやったぞ! 高校サッカー!! という賞賛だけでサッカー界の育成は大丈夫か? という心配がある。
昨シーズンはJリーグも降格がなく、終盤戦は消化試合となって、高校サッカーよりつまらない試合が多かった……。
今年はコロナに世界中が勝利し、新しい様式の中で一所懸命、生きていきたい。今年も宜しくお願いします。
2021年1月16日
三浦泰年