なぜ川崎は憲剛不在でも勝ち続けられたのか?記録破りの強さを育んだ背景にあるもの

カテゴリ:Jリーグ

加部 究

2020年11月26日

遡れば風間八宏監督招聘を発端に…

2016年当時の川崎の風間前監督と鬼木現監督。写真:滝川敏之

画像を見る

 この夜、川崎に敗れたG大阪の10番倉田秋は、王者との違いをこう語った。

「個々のレベル、チームの完成度……、挙げればキリがない。さらにいつも僕らが表現している“闘う”部分も出せなかった」

 川崎の記録破りの強さは、当然ながら一朝一夕で出来上がったわけではない。遡れば風間八宏監督招聘を発端に、アカデミーまで新たな技術意識を浸透させ、何より強化部が結果の出ない時期にも覚悟を決めて信頼を貫いた。こうして築かれた土台の上で、鬼木監督は主に攻撃的な守備を軸に戦術と魂を吹き込んでいった。

 ただし一方で見逃せないのが、現場と両輪を成すフロントの戦略的展望に基づく仕事ぶりだ。充実するアカデミーを最大限に有効活用するために、板倉滉、三好康児らの欧州志向は尊重し、反面大学へ進んだ脇坂泰斗や三笘らも引き続き追跡。また大卒の有力選手を次々に主力級へと変貌させていったことも、指導スタッフとそのノウハウの熟成や、スカウト陣の眼力を際立たせた。
 
「チーム一丸となって」は、もはや手垢のついた表現だが、川崎はまさにクラブが一体となり、ピッチに立つ選手たちを輝かせ、ピッチ上を理想に近づけるには、まずその背景が大切だということを知らしめた。

 残念ながらJリーグは、フットボーラーの終着点ではない。中村憲剛や遠藤保仁は、突出した水準でも国内に止まった最後の年代で、きっと今の川崎からも欧州に飛び出していく選手が出て来る。だが長く混戦が続いたJリーグにも、ようやく終着点となるクラブが誕生しつつあるのかもしれない。

 かつてリヴァプール生え抜きで「ワンダー・ボーイ」と言われたマイケル・オーウェンがレアル・マドリーへ移籍し、次にニューカッスルに戻ってくるとファンは激高した。「レアルに行くのは仕方がない。しかし国内の他のクラブへの移籍は許せない」

 川崎へ行けば上手くなる。川崎に誘われたら仕方がない――。フロンターレは、そんな憧憬のクラブへと確実に近づいている。
 
取材・文●加部 究(スポーツライター)

【PHOTO】川崎フロンターレが圧倒的な強さで史上最速優勝達成! 歴史に名を刻んだV戦士を一挙に紹介!

【川崎フロンターレPHOTO】圧倒的な強さで史上最速優勝!”笑顔”が溢れる選手を厳選!

 
【関連記事】
史上最速の戴冠劇はなぜ可能だったのか? 圧巻の強さを誇った今季の川崎を読み解く3つのポイント
中村憲剛の不在を乗り越え力を付けた川崎。“自立”と“復活”で掴んだ二度の連勝記録の意味
ルーキー三笘薫はなぜ川崎優勝の原動力となれたのか? 大ブレイクのカギは筑波大での4年間にあり!
「凄く残念ですが…」優勝の歓喜に沸く川崎で守護神チョン・ソンリョンが馳せる想い
「最高以外の何ものでもない。こんな幸せな40歳でいいのか」中村憲剛は喜び爆発!残すタイトルにも強い意欲

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト 王国の誇りを胸に
    4月10日発売
    サッカー王国復活へ
    清水エスパルス
    3年ぶりのJ1で異彩を放つ
    オレンジ戦士たちの真髄
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト 特別企画
    5月1日発売
    プレミアリーグ
    スター★100人物語
    絆、ルーツ、感動秘話など
    百人百通りのドラマがここに!
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 完全保存版
    1月17日発売
    第103回全国高校サッカー選手権
    決戦速報号
    前橋育英が7年ぶりの戴冠
    全47試合&活躍選手を詳報!
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ