ただ失点シーンではふたつの誤算があった。まず「ミスがあった」（ネルシーニョ監督）33分のCKのシーン。小川はこう解説する。
 
「スカウティングでは（相手のCKは）ニアを狙ってインスイングのボールを入れてくると言われていた。インスイングのボールだとゴールにそのまま向かってくるので、練習どおり、ラインを少し下げて準備をしていた。でも実際は（太田が右からのCKを左足で）アウトスイングのボールを入れてきて。そこはラインを少し上げるだとか臨機応変にやらなくちゃいけなかった」
 
　失点シーンを見返すと、先制点を奪われた森重の近くには高橋、ブエノがいたものの、よりゴールに近い位置にポジションを取り、ファーでヘディングを放った森重への反応が遅れている。
 
　また68分に武藤に追加点を奪われたシーンでは、直前に不運な展開があった。失点を喫する１分前に、自慢のスピードで武藤の突破を阻んでいたCBブエノが負傷し、交代していたのだ。
 
　ネルシーニョ監督は即座にCBの北本をベンチに呼び寄せ、北本はユニホーム姿でいつでも出場できる準備を整えていた。しかし、指揮官は急遽、北本ではなくMFの田中をアンカーの位置に入れ、チョン・ウヨンをCBに下げる決断を下す。
 
　その理由を指揮官は「ボールを上手く回せており、リズムを崩したくなかった」と説明する。しかし、決断は裏目に出た。失点の場面では、不慣れなCBに入ったチョン・ウヨンが後方からのパスを受けた武藤に対し、迂闊に一発で飛び込み、ワンタッチでかわされた。そしてケアに入った相棒の高橋祥は股抜きで置き去りにされ、独走を許した。
 
　綿密なスカウティングの上、相手の特長を消すサッカーは徐々にできている。ただ、少しでも予期できぬ事象が起こると対応が取れない――、それが神戸の現状なのだろう。
 
　ただ「まだ３節を終えたばかり」（小川）「悲観する内容ではない」（P・ジュニオール）と選手たちの表情は揃って暗くない。不確かではあるものの、少なくない手応えを感じているのは事実だ。ネルシーニョ神戸がここからどんな巻き返しを見せてくれるのか、その対応力に注目したい。
 
取材・文：本田健介（サッカーダイジェスト編集部）