ネイマールが派手に転ぶワケは?
ヨシプ・イリチッチ(アタランタ/スロベニア代表FW)
今年のCLで躍進を見せたアタランタ。その立役者となったのが32歳のイリチッチだ。2007年に母国スロベニアのボニフィカでプロデビューし、10年の夏にイタリアへ渡ってから約10年。ついに欧州の檜舞台に立ったベテランだ。
ラウンド・オブ16の第2レグのバレンシア戦で見せた4得点をはじめ、その活躍は鮮烈だった。プロデビューから13年目にしてキャリア最高の夏を過ごした彼の姿に、セミの生き方を重ねてしまうのは私だけだろうか。
セミは、木の枝などに産み付けられた卵から幼虫が生まれ、まずすることは土に潜ることである。種類にもよるがそこから数年間、光の当たらない地中で木の根から汁を吸って成長する。そして長年過ごした地中に別れを告げ、地上へと這い上がっていく。
短命な種が多い昆虫界では、セミは幼虫期間を含めれば比較的寿命が長い方であると言えるだろう。しかし、その長い幼虫期間に比べ、成虫寿命は数週間と短命であることが儚さの象徴でもある。「遅咲き」と称されるイリチッチはまさに2019-20シーズン、一夏を謳歌するセミのごとく、世界中のサッカー・ファンの前で“羽化”してみせたのだ。
ちなみに日本には、チッチゼミというセミが実在する。“イリチッチゼミ”の成虫寿命がどのぐらいかはわからないが、来年もCLという光のもとで活躍する姿を見られるのを期待したい。
今年のCLで躍進を見せたアタランタ。その立役者となったのが32歳のイリチッチだ。2007年に母国スロベニアのボニフィカでプロデビューし、10年の夏にイタリアへ渡ってから約10年。ついに欧州の檜舞台に立ったベテランだ。
ラウンド・オブ16の第2レグのバレンシア戦で見せた4得点をはじめ、その活躍は鮮烈だった。プロデビューから13年目にしてキャリア最高の夏を過ごした彼の姿に、セミの生き方を重ねてしまうのは私だけだろうか。
セミは、木の枝などに産み付けられた卵から幼虫が生まれ、まずすることは土に潜ることである。種類にもよるがそこから数年間、光の当たらない地中で木の根から汁を吸って成長する。そして長年過ごした地中に別れを告げ、地上へと這い上がっていく。
短命な種が多い昆虫界では、セミは幼虫期間を含めれば比較的寿命が長い方であると言えるだろう。しかし、その長い幼虫期間に比べ、成虫寿命は数週間と短命であることが儚さの象徴でもある。「遅咲き」と称されるイリチッチはまさに2019-20シーズン、一夏を謳歌するセミのごとく、世界中のサッカー・ファンの前で“羽化”してみせたのだ。
ちなみに日本には、チッチゼミというセミが実在する。“イリチッチゼミ”の成虫寿命がどのぐらいかはわからないが、来年もCLという光のもとで活躍する姿を見られるのを期待したい。
ネイマール(パリ・サンジェルマン/ブラジル代表FW)
ネイマールはなぜ派手に転ぶのか――。これまで多くの観察をしてきた経験をもとに、一つの理由に思い当たった。敵に対する防衛手段なのではないかと。
派手に転ぶことで審判へのアピール力を増し、被ファウル数を増やす効果もあるかもしれないが、相手DFがファウルやイエローカードを恐れて激しいコンタクトをやりづらくなり、結果として自身の怪我予防に繋がるという効果もある。
ネイマールの振る舞いを見て、私はある虫のことを思い出していた。フクラスズメという蛾である。この蛾はおそらく多くの人から何の注目もされていない地味な昆虫だが、幼虫が変わった振る舞いをすることで少し有名である。
幼虫の身体にちょっと触れると、上半身(頭部と胸部)を反り上げ、猛烈な勢いで首を左右にブンブン振りまくるのだ。声は発しないがまるで、「こっちに来ないで!」と泣き叫んでいるようにすら見える。これは外敵に対する威嚇であり、命を守るための必死の防衛行動に他ならない。
ネイマールも自身を守るために、必死に防衛行動を発動しているのかもしれない。フクラスズメと全く同じではないが、奇しくも幼虫の身体は、セレソンと同じ黄色を帯びている。
文●こんちゅうクン
【著者プロフィール】
こんちゅうクン(北野伸雄)/1985年、静岡県浜松市生まれ。九州大学農学部生物資源環境学科で昆虫について学ぶ。チャバネアオカメムシの卵に卵を産みつける寄生バチの研究がテーマ。2014年より磐田市竜洋昆虫自然観察公園の職員として、昆虫の楽しさや面白さ、奥深さを子どもから大人まで幅広い世代に伝えている。2020年から磐田市竜洋昆虫自然観察公園の館長就任。
ネイマールはなぜ派手に転ぶのか――。これまで多くの観察をしてきた経験をもとに、一つの理由に思い当たった。敵に対する防衛手段なのではないかと。
派手に転ぶことで審判へのアピール力を増し、被ファウル数を増やす効果もあるかもしれないが、相手DFがファウルやイエローカードを恐れて激しいコンタクトをやりづらくなり、結果として自身の怪我予防に繋がるという効果もある。
ネイマールの振る舞いを見て、私はある虫のことを思い出していた。フクラスズメという蛾である。この蛾はおそらく多くの人から何の注目もされていない地味な昆虫だが、幼虫が変わった振る舞いをすることで少し有名である。
幼虫の身体にちょっと触れると、上半身(頭部と胸部)を反り上げ、猛烈な勢いで首を左右にブンブン振りまくるのだ。声は発しないがまるで、「こっちに来ないで!」と泣き叫んでいるようにすら見える。これは外敵に対する威嚇であり、命を守るための必死の防衛行動に他ならない。
ネイマールも自身を守るために、必死に防衛行動を発動しているのかもしれない。フクラスズメと全く同じではないが、奇しくも幼虫の身体は、セレソンと同じ黄色を帯びている。
文●こんちゅうクン
【著者プロフィール】
こんちゅうクン(北野伸雄)/1985年、静岡県浜松市生まれ。九州大学農学部生物資源環境学科で昆虫について学ぶ。チャバネアオカメムシの卵に卵を産みつける寄生バチの研究がテーマ。2014年より磐田市竜洋昆虫自然観察公園の職員として、昆虫の楽しさや面白さ、奥深さを子どもから大人まで幅広い世代に伝えている。2020年から磐田市竜洋昆虫自然観察公園の館長就任。