完全復調はまだ先? 香川真司の「フィジカル」を再検証する

カテゴリ:ワールド

澤山大輔

2015年03月02日

時折見せる首を傾げる仕草からは――。

ポイントは「股関節」。その可動域の向上がパフォーマンスの向上につながっていると、橘田氏は指摘する。 (C) Getty Images

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――一般的には『胴体=体幹』と思われていると思いますが、違うのでしょうか?
 
「体幹トレーニングにおいて鍛えたい部分は、実はそんなに大きな範囲ではないんです。背骨寄りについているもっと小さな筋肉、『多裂筋』と呼ばれる部位です。
 
 多裂筋は意識して部分的に収縮させることが難しい深層筋ですが、都合のいいことに腹筋のひとつであり、腹腔全体を覆う腹横筋の筋膜が背部で多裂筋とつながっています。そのため、腹横筋を収縮させることで腹腔内の圧力が高まり、背部に走る筋膜が多裂筋を引っ張ることで、それに対抗して多裂筋も収縮し、鍛えることが可能となります。
 
 体幹トレーニングに関しては、『大きな筋肉のパフォーマンスを最大限に上げるために、小さな筋肉が必要』と考えるのが分かりやすいでしょう。いわゆる『キレがない』という状態は、足や腕の大きな筋肉を動かすための土台、体幹(小さな筋肉)が固定されていない状態になります」
 
――なるほど、『キレがない』というのはそういうことなんですね。
 
「香川選手は身体の表面、つまり大胸筋や背筋の部位に関しては鍛えられています。しかし、内側の筋肉がうまく鍛えられていないため、外側からガチっと固めるような状態になってしまっているのではないでしょうか。
 
 結果、体幹がうまく働かず、股関節に力が伝わりにくく、そのため股関節自体が動かしにくくなり、固まってしまい、可動域が下がる……そういう負の連鎖に陥っているように思います」
 
――今後、香川選手はどういう方向性で身体を作っていけばいいのでしょうか?
 
「まずは、股関節の可動性の向上と動きを作るコーディネーションの構築が必要でしょう。また、シュートが浮いてしまう現象を解消するためには骨盤の動きのチェックや、多裂筋を意識した体幹トレーニングを取り入れていく必要があると思います。
 
 多裂筋はすごく疲れやすく、萎縮しやすい部位です。実は、そう簡単に鍛えられる部位ではありません。大きな筋肉だと負荷をかけた分だけ大きくなったりしますが、多裂筋はそういうわけにはいかないのです。
 
 できるだけ低めの負荷から開始し、ルールに従ってトレーニングを行なう。部分、部分だけを見るのではなく、全体のバランスを考えながら身体作りを進めていくことが重要だと思います」
 
――なるほど
 
「最近のマインツ戦などの試合を見ていると、ドルトムントのチームとしてのリズム向上も手伝ってか、躍動感あるプレーは増えてきました。しかし、時折見せる首を傾げる仕草からは、まだ自分のプレーに満足できていないように見受けられます。
 
 ただ、少しずつボランチからパスを引き出す際の身体の使い方、コーディネーションは向上しつつあるように見えます。これは、股関節の可動域が上がってきたことを意味するのではないでしょうか」
 
――肉体的にもまだ完全ではないものの、回復基調にあると考えてよさそうですね。ユナイテッド時代の低調なパフォーマンスからすると、光が見えてきているのではないかと思います。日本の宝である香川選手が完全復調することを心から期待しています。
 
分析・検証:橘田幸博
取材・文:澤山大輔
 
【分析者プロフィール】
橘田幸博(きった・ゆきひろ)
リアンスポーツ整骨院院長。フィジカル・コンサルティングチーム『フィジカリズム』所属。マニュアルセラピスト土屋潤二氏を師とし、『オランダ徒手療法』というスタイルで一般の方からアスリートまで幅広く施術している。現在はタッチラグビー日本代表トレーナー、関東2部所属フットサルチームトレーナーとしても活動。『日本のサッカーのために何ができるのか』を常に考え、指導者とも連携をとっている。
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