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内田篤人がサッカー界で本領を発揮するのはむしろこれから? 本質を見抜く目に、日本人最高レベルの経験値も

カテゴリ:日本代表

加部 究

2020年08月23日

エース級に立ち向かってきた内田の安定したパフォーマンスがなければ…

右膝の故障に悩まされた内田。それでも、日本人では最高レベルの経験を武器に常に安定したプレーを披露した。写真:サッカーダイジェスト

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 所属クラブでの順風満帆ぶりとは裏腹に、代表では節目ごとに辛酸をなめた。地元静岡で開催されたU-16アジア選手権ではグループリーグで敗退し、北京五輪でもまさかの全敗。2010年南アフリカ・ワールドカップでは岡田武史監督の土壇場での戦術変更の影響でベンチに座り、さらに4年後のブラジル大会でもフル出場はしたが惨敗した。

 ただしこの間も、日本代表が上げ潮で世界との距離を縮めていると実感できたのは、右サイドで内田の波の少ないパフォーマンスが計算できたことが影響している。ネイマール、リベリー、クリスティアーノ・ロナウド……、欧州シーンや国際舞台では、必ず相手の左サイドにエース級の仕掛け人がいる。おそらく内田でなければ、惨状に見舞われても不思議はないアタッカーばかりだ。反面内田自身も、南アでピッチに立てなかった痛恨の想いを胸に、自慢の攻撃的資質に守備の対応力を上乗せし、涼しげな風貌とは裏腹の凄味を着実に増して来た。

 ブラジル・ワールドカップでは、ふたつの「タラレバ」が浮かぶ。コートジボワール戦前半、本田の先制後にペナルティエリアに侵入した内田は、見事な切り替えしでDFをかわし左足で狙った。またコロンビア戦では1点差を追う65分に、岡崎慎司とのワンツーから大久保嘉人に完璧なクロスを送った。どちらかが決まっていれば日本代表の命運は変わっていたかもしれない。

 北京五輪から12年が経過した。さすがに反町氏も、長寿傾向が強いSBの優等生が真っ先に現役を退くことなど想像もつかなかったに違いない。だが今思えば完治しなかった故障も、内田だけが知悉する世界の頂点との切磋琢磨の代償であり、逆に勲章だと捉えることもできる。

 本質を平然と見抜く鋭敏な目、またそれを端的に表現する聡明さ、そして他に到達者不在の経験……、日本サッカー界で内田が本領を発揮するのは、これからなのかもしれない。

取材・文●加部 究(スポーツライター)

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