自宅を買い取ったのは麻薬との関与が疑われる人物だった
だが、決定的な問題は、邸宅を購入したその人物が、大がかりな麻薬の取引に関わっていたことだ。
2018年10月にはリヨン警察署がこの人物「TH」と共犯を疑われるふたりを捜査し、その一環で元バストス邸を家宅捜索。すると2階の映画鑑賞ルーム内の一カ所で、麻薬捜査犬がピタリと止まった。そこにはスポーツバッグがあり、開けると中から25万2650ユーロ(約3200万円)もの現金の山が出てきたという。
さらにワインカーヴには、超高級シャンパーニュ(シャンペン)が数十ボトルあった。しかも同日、「TH」がアジトとして使用していたらしいリヨン市内の別のマンションで、36キロものコカインと拳銃6丁が押収されたのだった。
報道によると、「TH」と共犯者たちはドローム県やグルノーブル郊外に怪しい夜間移動を行なっており、共犯者とされる人物は、マルセイユにも出向いて有名ギャングに会っていたという。このため当局は、彼らが大がかりなコカイン輸送を担当していたと睨んで捜査を詰めている。バストスと代理人は、これに関与していた可能性を含めて、取り調べられているようだ。
2018年10月にはリヨン警察署がこの人物「TH」と共犯を疑われるふたりを捜査し、その一環で元バストス邸を家宅捜索。すると2階の映画鑑賞ルーム内の一カ所で、麻薬捜査犬がピタリと止まった。そこにはスポーツバッグがあり、開けると中から25万2650ユーロ(約3200万円)もの現金の山が出てきたという。
さらにワインカーヴには、超高級シャンパーニュ(シャンペン)が数十ボトルあった。しかも同日、「TH」がアジトとして使用していたらしいリヨン市内の別のマンションで、36キロものコカインと拳銃6丁が押収されたのだった。
報道によると、「TH」と共犯者たちはドローム県やグルノーブル郊外に怪しい夜間移動を行なっており、共犯者とされる人物は、マルセイユにも出向いて有名ギャングに会っていたという。このため当局は、彼らが大がかりなコカイン輸送を担当していたと睨んで捜査を詰めている。バストスと代理人は、これに関与していた可能性を含めて、取り調べられているようだ。
捜査対象となったふたりの弁護士は、「ミシェル・バストスはブラジル市民であり、スイスの口座も祖国で申告されている」「したがってブラジル税務当局とは法に適った関係にある。彼も彼の代理人も、あの家の購入に麻薬取引に由来する金が絡んでいたらしいなどという点については、いかなる情報も持っていなかった」と表明。相手の素性を知らずに売ったと強調している。
はたして、バストスと代理人は、本当に何も知らずに家を売り急いだだけなのか? それとも何となく黒いカネを予想しつつも、とにかく現金収入が欲しくて売ったのか? はたまた本格的に麻薬絡みの黒いカネを白くするマネーローンダリングに関わったのか?
いずれにせよバストスは、「呪われた館」にしばらく苦しめられそうな気配だ。
フランスでは、現金の所持そのものは違法ではなく、限度額もない。ただし、申告されていない現金や出どころを証明できない現金の所持は違法であり、脱税やマネーローンダリングの容疑対象となる。
また、不動産売買の現金取引限度額は3000ユーロ(約37万5000円)。それも全て公証人を通じて証明されねばならず、納税の対象だ。16万ユーロもの現金を2回にわたってこっそり受領した場合は違法となる。
大金を稼ぐフットボーラーには魑魅魍魎(ちみもうりょう)がすり寄りやすい。かくして、バストス夫人の夢は、いつしか恐ろしい悪夢に変貌してしまったのだった。
取材・文●結城麻里
text by Marie YUUKI)