【山形】坂元達裕、汰木康也、児玉剛…。過去3年の個人昇格が凄い!!

カテゴリ:Jリーグ

頼野亜唯子

2020年06月09日

個人昇格のパターンは大きく分けて3つ

今季もコンスタントな活躍を見せれば、CBの熊本もJ1の強豪クラブに引き抜かれる可能性も。写真:田中研治

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 さて、こうして山形の個人昇格組を列挙してみると、いくつかパターンがある。一つは、もともとJ1でのキャリアを持つ選手の場合。小林や柳のように出場機会を求めて山形にやって来たり、富居、菅沼、茂木、児玉、阪野のように他のJ2クラブを経て山形のほうがよりJ1に近いと認めて加入して来る。山形で定点観測をしていると、この「J1とJ2のボーダーライン上」にいる選手を数多く獲得できるようになったところに、クラブの成長を感じる。2度のJ1昇格を経験したことによって、山形はJ1昇格が現実味のあるクラブとして認識されるようになった。山岸範宏(JFAアカデミー福島男子U-18GKコーチ)、本田拓也、加賀健一(現ブラウブリッツ秋田)といったJ1経験の豊富なベテラン選手を要所要所で獲得したことも、これからJ1に向かおうとする若い選手たちに良い影響を与えることになったと思う。

 ふたつめは、J2水戸でキャリアをスタートさせた鈴木、J3鳥取からJ2山口への個人昇格を経て、J2ではより上位の山形にステップアップした中山のようなパターンだ。「元J1」の肩書きはなく、実力でのし上がっていくしかない。決して簡単な道ではないだけに、彼らの逞しさにはエールを送りたい。
 
 3つ目が、汰木や坂元のように、新卒で獲得した選手が育って巣立っていくパターンだ。J1昇格経験があるとはいえ、山形のように資金力に乏しい地方のクラブは、有望な新卒選手の獲得に苦労する。競合になればなかなか獲得は難しい。だが、実は坂元も汰木も、他クラブとの争奪戦にならずに獲得している。

 汰木は小学生の時から横浜F・マリノスの下部組織で育ち、ユース時代には日本クラブユースサッカー選手権(U-18)で優勝、MVPを獲得している。当然のように本人はトップ昇格を信じていたが、クラブの判断は「大学で揉まれて戻って来い」というもの。プロになることしか考えていなかった汰木は、山形から届いたオファーに迷うことなく応じた。

 坂元の場合は大学(東洋大)からの加入だから、競合はより厳しそうなものだが、山形にとっては幸運なことに、坂元には大学4年の夏を過ぎてもプロからの声はかかっていなかった。「ダメかな」と感じ初めていた中で、大学の監督を通じて山形への練習参加を「こちらからお願いした」。監督の古川毅氏がかつて山形でプレーしていた縁でもある。練習参加の後、山形は即オファー。その後になって「厳密に言うと(獲得競合が)ちょっとありましたが、うまくやりました」(高山明泰強化部長)。
 
 今季は残留してくれたが、J1に引き抜かれるのではとヒヤヒヤしながら動向を見守っていた選手もいる。DF熊本雄太もその一人だ。早大から加入して今季3年目だが、1年目で34試合、2年目では38試合と堅守・山形のDF陣の中で奮闘しながら成長を見せている。熊本は、怪我のために大学4年の“就職活動最盛期”を棒に振っている。山形に練習参加した際もプレーはできず見学のみ。ルーキーイヤーのキャンプはリハビリからスタートした。獲得に二の足を踏んでもおかしくない状況だったが、あくまでも回復後のパフォーマンスを見極めて獲得に踏み切った山形強化部の勝利ではないだろうか。

 クラブ目線で言えば、個人昇格の選手を輩出するよりもクラブとして昇格する方がいいに決まっている。けれども、1日も早く、上のカテゴリーでプレーしたいというギラギラした向上心はチームにとっても悪いことではない。いつまでもJ2でぼやぼやしているつもりはないーーそういう個々の気持ちがエゴではなく結束に向かって行ったのが、昨季の山形だったようにも感じている。ただし、野心に燃える選手たちが山形を選んでくれるのも、J1に近い場所にいればこそ。前回のJ1から5年。そろそろ3度目の「J1山形」を実現させなければならない。

文●頼野亜唯子(フリーライター)

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