11年前のCL決勝で見せたイニエスタの「ビッグプレー」と「隠れた闘争心」【現地発】

カテゴリ:連載・コラム

エル・パイス紙

2020年05月20日

イニエスタに苛立ちを募らせユナイテッドの守備陣は…

 もともと目立つことを嫌う謙虚な性格や地味な風貌も重なり、イニエスタと情熱や競争心を結びつける評価は思いのほか少ない。実際、いつも強調されるのは華麗なテクニックである。しかしそうしたステレオタイプな見方が不当であることはこのマンチェスター・U戦を見ても明らかだった。

 イニエスタは威厳を前面に押し出すような選手ではない。しかしその風貌や振る舞いに、我々もまたポジティブな意味で騙されているのだ。

 さらに留意すべきは、イニエスタは怪我を押してこのファイナルに出場した点だ。欧州ナンバー1クラブを決するこの大舞台でプレーするには、最大限の勇気と限界まで戦う責任感が求められる。そのことを誰よりも知る指揮官、ジョゼップ・グアルディオラはリスクを承知で先発起用に踏み切った。
 
 そしてイニエスタはペース配分に気を配りながら、時には大胆にドリブルを仕掛け、時には冷静にゲームを落ち着かせと局面に応じて常に最適なプレーを選択し、百戦錬磨の猛者をキリキリ舞いさせた。しかもそれをいつものように眉一つ動かさずさらりとやってのけた。

 次第に苛立ちを募らせた相手守備陣は“8番”を格好の標的に定め、あからさまに激しく当たる場面もあった。しかし最後には、イニエスタの迫力を前にして逆に威圧させられる格好となったのだ。

 イニエスタはその繊細なプレーの陰に、猛々しい闘争心を宿らせている。試合を支配したこの一戦で、それを再認識できたのは幸運だった。缶詰め状態の中でフットボールを見るのも有意義な時間になりうるのだ。

文●サンティアゴ・セグロラ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 
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