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「打ちのめされた」W杯最終予選。今でも忘れない、帰国便でオフトにかけられたひと言は?【福田正博が語る“オフトジャパンの真実”EP6】

カテゴリ:日本代表

白鳥和洋(サッカーダイジェスト)

2020年05月13日

「身体も心も疲れ果てていた」

イラン戦の出来事も体験談を基に語ってくれた福田。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 失点シーンを振り返ると、決して日本の守備は悪くない。ショートコーナーに対してカズは対応しているし、ゴール前にも十分な人数がいる。それでも決められたのは、陳腐な表現ながら“不運”としか言いようがない。もしくは、中山のゴールで火が付いたイラクが底力を発揮したのか──。

 いずれにしても、あと十数秒で、というところでまさかの被弾。最後まで闘志を燃やしたイラクの一発にオフトジャパンは沈んだ。

 実際、その場に倒れ込んだ選手たちにもはや反撃する力は残されていなかった。試合終了のホイッスルが鳴った直後、福田はすぐさまベンチを見ている。

「他会場の結果を知らなかったからね。でも、オフトが悔しい顔をしていたから、『あ~、ダメなんだ』って、『まさか、そんな』って思ったよ」

 日本がイラクと引き分けた結果、ワールドカップの出場権を手にしたのはイランを4-3で下したサウジアラビアと、北朝鮮を3-0と撃破して日本と同勝点ながら得失点差で上回った韓国だった。日本は、まさに“あと一歩”届かなかったのである。これが俗に言う“ドーハの悲劇”だ。

 ワールドカップへの切符が、最後の最後で手からするりと抜け落ちる。そのショックをひと言で表現するなら、茫然自失。福田は語る。

「結果を知ったあとのことはほとんど覚えていない。というか、忘れたい想いが強いのかもしれない。ずっと下を向いていたから、周りの風景も見ていない。どうやってドレッシングルームに行って、着替えて、バスに乗って、宿舎に戻ったからもぼんやりとしている。ホテルでの食事は覚えているけど、次の日に帰ったかどうかも思い出せない。それだけ、自分の人生の中で大きな出来事だった。あれだけ自分に期待したこともないし、周りから期待されたこともなかった。空港でいろいろ訊かれたけど、答えなかったと思う。俺は疲れ切っていた。ワールドカップに出られなかったショック、自分が何もできなかったショックもあって、本当に打ちのめされたから。身体も心も疲れ果てていた」
 
 ただ、福田がはっきりと覚えていることがひとつある。それは、帰りのチャーター機でオフト監督にかけられたひと言だ。

「お前、どうした?」

 最終予選の精彩を欠いたプレーに対しての感想である。それだけ、オフト監督は福田に期待していたのだ。

 蛇足になるが、今回この物語の主人公に三浦知良でもラモス瑠偉でもなく、福田を選んだのは彼こそオフトジャパン最大のキーマンだと考えていたからだ。「たら・れば」の話をしても仕方がないのは承知のうえで、あえて主張させてもらう。福田のコンディションが万全だったら、最終予選はまた違う結果になっていたと。<エピソード7に続く。文中敬称略>

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
 
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