「華麗だがゴールが少ない」完璧主義者のイニエスタが苦しんだ葛藤【現地発】

カテゴリ:連載・コラム

エル・パイス紙

2020年05月06日

「失ってみて、初めて真の価値を知ることができる」

 いまイニエスタは妻アンナさんと4人の子供たちと一緒に、神戸で幸せに暮らしている。古巣のバルサは彼の不在に今なお苦しみ続けているが、もはや過去に戻ることはできない。彼自身もこう語っている。

「人は失ってみて、初めて物事の真の価値を知ることができる」

 マルコス・ロペス記者の故郷ウエルカル・オベラはイニエスタの故郷フエンテアルビージャに近い距離にある。イニエスタがバルサに在籍していた時もふたりの自宅は近距離にあった。こんなところからも、ふたりのフィーリングの良さを感じさせる。我々を楽しませ続けてきたイニエスタが今度は、周りの人間がそのプレーや人柄をどう批評するかを鑑賞する側になった。

 チェフの「18ミリ」というのはほんのわずかの差であるが、それを具体的に示したことがミリ単位へのこだわりを見せ続けた完璧主義者、イニエスタの人となりを象徴しているかのようでもある。

 イニエスタは不世出のプレーヤーだ。そんな名手に相応しく、このドキュメンタリーは54名の豪華な顔ぶれが登場するが、しかしそのストーリーは肩肘張ったところはまるでなく、実にスムーズに進行する。そう、イニエスタという人間が常に自然体で振る舞うように――。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 
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