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【番記者コラム】愛媛が最もJ1へ近づいた2015年――粉飾決算のピンチをチャンスに変えた指揮官のリバウンドメンタリティ

カテゴリ:Jリーグ

松本隆志

2020年05月02日

新任の木山監督が旗手となり…

クラブ史上最高のJ2で5位という成績を収めた15年シーズン。写真:滝川敏之

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 クラブの不祥事によるJリーグからのペナルティは、結果的にけん責と制裁金300万円という“温情”裁定で済んだものの、県民クラブを名乗るチームへ向けられた目は冷ややかなもので、その矢面に立たされた選手たちは“被害者”という他なかった。また、クラブが緊縮財政を強いられたために前年まで行なっていたキャンプも取り止めるなど、シーズン開幕前からネガティブな要素ばかりが飛び交った。

 戦わずして訪れたピンチ。しかし、これこそが反撃の火種になるとは、番記者ながらこの時は想像できなかった。

 反撃の旗手となったのは新任の木山監督。クラブの苦しい台所事情をある程度把握したうえで、あえて火中の栗を拾うようにオファーを受諾した新指揮官の覚悟は決まっていた。

 「(粉飾決算は)クラブで起こったことだけど、我々もクラブの一員。もう一度、愛媛を応援してもらうスタンスを作れるのは、勝利する姿を見せられる我々でしかない。だから苦しんでいるクラブを自分たちの力で何とかしていこうと思うし、そのモチベーションで我々は戦っていくつもり。僕は自分のことを雑草だと思っている。恵まれていないことは平気。逆にその中で何ができるか。選手らと一緒になって周りの人たちの評価を覆していけたら、こんなに楽しいことはない」
 
 愚痴がこぼれてもおかしくない状況の中、木山監督はなにひとつ言い訳することなく、それらをすべてを背負うことで、エネルギーに変えようとしていた。そして、淀みなくストレートに突き刺さる指揮官の言葉は「自分たちから良い知らせを発信していけば、このチームが生まれ変わるチャンスになる」(河原和寿)と選手たちも突き動かし、指揮官のポジティブなマインドに染まったチームは、知らぬうちにもくもくと反撃の狼煙を上げようとしていた。

 チームは前半戦を粘り強く戦って中位でシーズンを折り返すと、夏場での5連勝を皮切りに一気にシフトアップ。その勢いのままに混迷を極めたプレーオフ戦線へ割って入り、見事J1昇格挑戦権を手に入れた。

 この年の愛媛は決して力や技で対戦相手を打ち負かすチームではなかったが、まるでスポ根ドラマのような良い意味でプロらしくない真っ直ぐなピュアさがあった。自己犠牲心を惜しまず、とにかく走り、食らいつき、どんな状況でもファイティングポーズを取り続ける姿勢はチーム全体の共通意識として浸透。だからこそ、負け試合でも無様な姿を見せることはなく、観る者に最後まで諦めないスタンスを訴えかけた。

 木山監督はプレーオフ準決勝敗退後、会見で戦評を述べたあとに次のようなコメントで締め括った。

 「今季、選手たちが見せてくれたものは愛媛の人たちに希望を与えるものだった。しっかり胸を張って帰りたい」

 チームはピンチを跳ね返し、強固なリバウンドメンタリティを武器に周囲の評価を見事に覆した。なにより、スタジアムを去る際に指揮官が見せた晴れやかな表情がシーズンの充実ぶりを表わしていた。

取材・文●松本隆志

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