バス内のレオナルドは、冷ややかな表情で携帯を耳につけ、誰かと会話を開始。これを見た『France Football』誌のデイヴ・アパドゥー記者は、「レオナルドの行動には何ひとつ偶然がない。さっさとバスに乗り込んだのも、いまバス内にいるのをテレビカメラに撮影されていることも、全て承知でやっている」と分析した。

　また、ガリ女史も「そもそも昨年のマンチェスター・ユナイテド戦の敗北以来、トゥヘルはけっして穏やかに仕切れてこなかった」と同意した。トゥヘル監督の今後に不安が漂い始めたと言える映像だった。

　さらに、「（マルコ・）ヴェラッティの累積警告による第２レグ出場停止は、プロにあるまじきミスか？」にも、コメンテーターのほとんどが「ウィ」で一致。ガリ女史は「プロにあるまじきミスという表現は好きじゃない。それはセルジュ・オリエの水煙草事件のようなヤツを言う。ただヴェラッティの審判抗議は毎度で、疲れるし、苛々する！ 試合終盤で、出場停止になることもわかっていて、抗議してしまうのだから」と主張した。

　そしてネイマール。「この試合は、彼のゴールで救われたか？」のお題になると、改めてこの間のネイマールの管理問題が浮上。リーグ戦を休んでいた間、本当に怪我していたのかどうかも謎めいており、監督がメディカルスタッフの「要休息」という判断に納得していない様子。この間にネイマール本人が盛大な誕生パーティーや、ドイツでのCM撮影などをこなしていたためだ。

　はっきりしたのは、この「休息」のおかげですっかり試合勘が鈍っていた点だろう。ミクーは「ネイマールにはかなり失望した。何試合も出場していないのでリズムはよくないだろうとは思っていたが…これほどひどいとは思わなかった」と強調。「このコンディションなら、ハーフタイムで下げるべきだった」という意見も出ており、全員が頷いていた。

　一方、監督は依然として記者会見に追われていた。そして、「何となく選手たちは恐怖をもってプレーしていたような気がする」――。

　そもそも、この試合の前にレオナルドSDは『Canal＋』の試合後の特番『Canal Football Club』に中継出演して大演説をぶち上げ、ドルトムント戦を前に漂う「ネガティヴィテ（ネガティブ性）」を批判していた。

　昨季もベスト16で敗退していたパリSGだが、「ネイマールとエムバペを擁するなんて世界中のどこにもない」、「素晴らしいチーム」、「それだけで幸せなこと」、「CLだって生きるか死ぬかの問題じゃない」と、しきりに悲劇性や恐怖を緩和してきた。

　当初は「自分たちのせいかもしれない」と応じていたトゥヘル監督も、やがてCLに対して「心配していない」「信じている」とポジティブな発言をするようになった。

　だが実際は、チームの勢いに水を差すほどに深刻だったのだろうか。選手たち自身も、ベスト16で敗退というトラウマと恐怖に駆られたままだったようだ。その辺りは今後、もっと明らかになっていくかもしれない。

　番組では最後に「まだパリのベスト８進出を信じるか？」のお題が来ると、視聴者から「きっとパリはベスト８に進出するだろう」という反響が寄せられた。

　出演者も「可能性はまだある」で一致している。過去の統計から算出したデータでは、ファーストレグを１－２で落としたチームがベスト８に進出する可能性は、55％だという。

　パリを襲ったこの嵐は、第２レグでおさまるのだろうか。これから第２レグが終了する３月11日まで、目が離せない。

取材・文／結城麻里
text by Marie YUUKI

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