【ユースコラム】育成強化の根幹を成すリーグ戦のピラミッドは本当に機能しているか?

カテゴリ:高校・ユース・その他

安藤隆人

2014年12月17日

現在のリーグ体制で、選手の実力に応じた環境を与えられるか?

歓喜と失望のコントラストが色濃いプレミア参入戦。さらに下のプリンス参入戦でも同様の戦いが繰り広げられそうだ。(写真は履正社対前橋育英)

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 では、プリンスリーグに所属する強豪チームが県リーグに降格すると、どんな戦いが待ち受けているのだろうか。ある指導者の声だ。
「2部リーグがなくなったことで、なんとしてもプリンスリーグに残留しないといけない。もちろん2部に落ちることを推奨しているわけではないが、やはり2部と言えども、他県のさまざまなタイプのチームと戦える。それが県リーグになると、知ったチームも多いし、どの試合もガチガチに守られてしまったり、サッカーの質も落ちてしまう……。それを考えると、県リーグだけには絶対に落ちたくない、もう必死ですよ」
 
 最終節でようやくプリンス関東残留が決まった横浜ユースの関係者は、「やっぱり気が気じゃないよね。マリノスが県リーグ……。これは絶対に避けないといけない」と本音をこぼしていた。
 
 今、県リーグには多くのJユースがいる。かつての名門・千葉U-18をはじめ、横浜FCユース、甲府U-18などが県リーグを戦っている。高校で言えば、四日市中央工、矢板中央なども今年は県リーグで戦った。
 
 また、別の指導者がこんなことを言っている。
「県リーグは想像以上に苦しい。実力や個の力ではウチが上でも、相手はウチとやる時、徹底して守備を固めてくる。もちろんそれを破れないといけないのですが、インターハイ予選や選手権予選のような戦いを、リーグ戦でもやらないといけないのは、チーム作りにおいて、ものすごく苦労する。特に選手権予選はこれまで何度も試合をした相手と繰り返しやることになるので、より難しい試合になる。本音はもっとレベルの高い相手と、お互いが力を存分に発揮できるような試合を、ガチンコでやりたいんですが……」(某強豪校の監督)
 
 都道府県リーグでの戦いは、また別の『苦しみ』が存在する。来季、浦和ユースは大宮ユースとFC東京U-18がプレミアリーグに昇格したために、ギリギリで残留が決まった。国学院久我山、野洲などが都道府県リーグに落ち、千葉U-18はプリンス関東に昇格できなかった。
 
 プリンス関東を例に挙げると、昇格できる枠は関東8都県でわずかに2チーム。12月21、23日にプリンス関東参入決定戦が行なわれるが、横浜FCユース、甲府U-18などのJユースの実力者たちも、昇格するためにはあと2勝が必要となる。
 
 都県リーグを制しても、プリンス関東に上がるのは、非常に狭き門となる。関東ほどではないにしろ、他の地域でもその熾烈さは同じだ。一度県リーグに落ちると、そこからの浮上は想像以上に難しい。
 
 こうした状況下のプリンスリーグで、いったん残留争いに巻き込まれると、リーグ戦というより、毎試合がトーナメントのような戦いになる。前述したように、果たしてこれが、本当の『リーグ戦を通じての強化』につながるのだろうか。
 
 もちろん、現行のプレミア・プリンスリーグでも、トップ・オブ・トップの強化につながる側面はあるだろうが、トップから裾野にかけての幅広い育成につながっているかと言えば、議論の余地は大いにあるはずだ。より多くの将来性豊かな選手が、より高いレベルでプレーできる環境を整備する必要がある。
 
 Jリーグの選手は下部リーグに落ちても、自らの意思で移籍し、環境を変えることができる。しかし、高校生はそうはいかない。実力に応じた環境で戦えないのは大きな損失だ。そもそも実力に応じた環境を与えるために誕生したプレミアリーグなのであり、そこを頂点としたピラミッド型のリーグ体制で、育成年代の強化の底上げを図ってきたわけである。
 
 プレミアリーグにも様々な改革案が出始めているが、これを定着させるという意味では、現行の形で一定期間行なうのはいい。だが、多くの地域で2部制が廃止されたプリンスリーグに関しては、2部制の復活も含め、さらなる整備が必要だと考える。プリンスリーグと都道府県リーグとの間にある『格差』を認識し、育成のためのリーグ整備がなされることを切に願っている。

文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)
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