ユベントスのような「複合型の新スタジアム建設を…」
活動をするためには、資金も人材も必要となってくる。それらを集める原動力となってきたのは、岡田氏が語る夢と共感だった。
「これは不思議なもんで、これだけ豊かになった社会で、今の若い人たちというのが何を求めているのかというと、意外とお金なんかよりも、やりがいとか、夢とかそういうモノなんです。僕はもうホラに近い夢を語っているんですよ。そうするとみんな騙されてきよるんです(笑)。すると、そういう夢に対して、信頼とか共感とか、そういうモノに対してお金を出しくれる企業さんもいらっしゃいます。ただし、広告宣伝価値なんてないところにお金を出してもらっている。下手したら株主に、社長が訴えられる可能性だってあるわけです。決算書に『夢いくら』って出ないですからね。
そんな勇気を持って力を貸してくれた企業さんに、露出価値がないなら何かでお返ししなければならない。困っている会社にソリューションを提供できないか? 協力していただいている企業の間をつなぐ、マッチングができないか? いろんな可能性がまだまだあるのではないか? そうやって社会を変えていきたいと思っている。そしてそうしたことが、これからの世の中に大切になっていくんだと思っています。実際にこういうことにスポンサードしている企業だから興味を持ちましたと、新卒求人が10%くらい増えた企業もあったようです。これはもう企業ブランディングですよね」
ただし、現在の取り組みだけでは不十分だとも感じ、社会を動かしていく必要があるという。
「特にこれからの社会、AI(人工知能)や(いろんなモノがインターネットに繋がる)IOTが発達してくれば、本当に人間がいろんなことを判断しなくなる。自分で判断するよりもAIの言うことが当たれば、人間が自分で判断することをやめるんです。ナビなんかそうですよね。
その時に初めて、人間てなんなんだろうという問いがきて、快適に便利にすることだけじゃなくて、何かを乗り越えていこうとする時、人と助け合って何かをした時に、幸せを感じる。その幸せはスポーツとか文化にはある。より便利に快適にするというのは、それは間違いじゃない。ただ、もう一つ反対側には困難を乗り越えたりとか、没頭したりとか、そういうことが必要なんです」
FC今治は現在JFLで2位につけ、先日Jリーグライセンスの取得も発表され、Jリーグ参入まであと一歩のところにいる。
「我々の語っている“夢”は2025年までにJ1での優勝を目ざしています。28億円から30億円くらいの規模でそれができればと思っています。
今後はサッカー以外のことでも収入を増やさなければならなくて、イタリアのユベントスでは新スタジアムを建設した際にショッピングモールも併設しました。あのカルチョの国のイタリアでさえ、サッカーの試合だけでは人が集まらないんです。新スタジアムでは2時間以上も早くから人が集まり、試合後も1時間半以上人が滞在するようになったと聞きました。試合のない日も365日人が集まり、100マイル離れたところからもやって来るようになったそうです。
今治の人口は約16万人ほどというのを考えれば、我々の新スタジアム建設に際してはそういった複合施設を建て、より広い地域から人を呼べる、半日過ごせるようなそんな場を提供していかなければなりません」
明かした“夢”の一旦を担うスタジアム建設計画と、それを活用するためのJリーグ参戦。"開拓者"岡田武史の挑戦はこれからも続いていく。
取材・文●渡邊裕樹(サッカーダイジェストWeb編集部)