守備力が改善し、これからは嬉しい悩みが…

酒井の経験が守備の安定に一役買っている。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

フェルマーレンは、セットプレーでも神戸にプラスをもたらした。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)
攻撃力を取り戻した要因は、やはり守備の安定だろう。フェルマーレンと酒井が入ったことで課題だった左サイドの守備が改善された。2人のポジショニングが絶妙で、ほとんどスキがなかった。
例えば、27分頃の何気ない場面でも2人のうまさが見られた。サンペールが高い位置まで攻め上がった際、彼が空けたアンカーの位置にフェルマーレンが入り、フェルマーレンの位置を酒井が埋めている。こういう細かい連系が守備の安定を産み、それが思い切りのいい守備にもつながる。
今までFWへの縦パスに躊躇する場面があった大﨑玲央とダンクレーが、この試合では高い位置まで相手FWにプレスをかけ、そして潰し切っている。相手に入れ替わられてピンチを招くという課題も見事に修正されている。
トルステン・フィンク監督は「今日は満足している。守備もポゼッションも攻撃でもいいサッカーを見せたと思う。酒井(高徳)が入ることで左サイドに、より安定感をもたらしてくれると思う」と、にこやかな表情で振り返っている。理想のサッカーができた証拠だ。
2011年以来となるJリーグのピッチに立った酒井は、
「ヴィッセル神戸は失点しなければ、もともと攻撃力は高いので勝てると思っていました。だから、今日はまず失点しないことに集中して戦いました。個人的にはコンディションが上がってくればもっといいプレーができると思いますし、コミュニケーションが深まればチームはもっとよくなる」と話した。
問題はダビド・ビジャやルーカス・ポドルスキが復帰した際に、外国籍選手5枠をどう使うか。
今後も3−5−2システムを採用するなら、イニエスタ、サンペール、フェルマーレンの左サイドのユニットは崩せない。
3センターバックのバランスを考えるとダンクレーも外せない。そうなると、残り1枠をビジャ、ポドルスキ、ウェリントン、オマリで争うことになる。守備に外国籍選手のカードを割くか、それとも豪華な攻撃陣を形成するか。多国籍軍の悩みはこれからも続きそうだ。
取材・文●白井邦明(フリーライター)