一方でナイジェリア人の父を持つ望月ヘンリー海輝は191センチのサイドプレーヤー。
 
　持ち味は高さと縦への推進力。スピードがあるわけではないが、大きなスライドを生かしたプレーで敵陣へと攻め込む。チームでは２列目を任されることが多く、22日の川崎U-18戦でも同様のポジションで途中からピッチに立った一方で、７月に初招集されたU-18代表ではSBとして起用された。近年、酒井宏樹（マルセイユ）に代表されるように日本人のSBも大型化が進んでいるとはいえ、190センチを超える選手はほとんどいない。それだけにU-18代表の影山監督は大きな期待を寄せている。
 
　大化けする可能性を漂わせている望月。しかし、なぜこれほどの選手が今まで無名だったのか。昨季まではAチームで出場する機会はほとんどなく、中学時代に遡ってもほとんど公式戦で出番がなかったからだ。望月を中学時代から指導してきた三菱養和ユースの生方修治監督は彼の現在地をこう説明する。
 
「将来性があるのでユースに上げたのですが、まだまだこれから。試合ごとにやれることも増えて、自信も増している。試合慣れはしてきたけど、公式戦慣れはしていない。穏やかな性格で（栗原イブラヒム）ジュニアとはメンタリティが違うので、そういう意味では時間がかかるかもしれない。だけど、経験を積めば、歳を追うごとに良くなっていく」
 
　実際に初招集された７月のU-18代表候補合宿でもそうだった。紅白戦では同世代の選手やチームのやり方を窺いながらプレーしていたため、まるでダメだった。だが、翌日に行なわれた、いわきFCとの練習試合では、積極的に攻め上がって別人のようなパフォーマンスを披露。影山監督も「ヘンリーは全然違ったよね」と驚きを隠せない様子で、ちょっとした経験を積むだけで見違えるような動きを見せたのだ。
 
　言ってしまえば、底なしの吸収力を持つスポンジだ。今までトップレベルのゲームを経験していないだけに、伸びしろは無限大にある。進路は現時点で大学が濃厚だが、４年間で新たな経験を積めば、日本を代表するサイドバックにもなれるはずだ。
 
　高卒でのJ入りを目論むストライカーと大器晩成型の190センチの大型SB。惜しくもクラブユース選手権はグループステージで敗退となったが、彼らのゴールはもっと先にある。様々な経験を積みながら、都会の街クラブで技を磨くふたりの成長が楽しみだ。
 
取材・文●松尾祐希（フリーライター）