久保建英、A代表デビューの意味。天才少年の理想的な足跡に育成のあるべき姿が見える

カテゴリ:日本代表

加部 究

2019年06月10日

「今までの天才たちは、指導者と意見が合わなくても強引に自分を通し、それでも潰れなかった選手だけが残った」

周囲との連係もスムーズにとれていた。非凡さが窺えるデビュー戦となった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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 FC東京とJFA(日本協会)は、久保に相応のハードルを課すために侃々諤々の議論を繰り返したに違いない。U-23に合流してからも、時には同年代のチームで楽しく創意工夫をする場も提供し続けた。U-17とU-20の掛け持ちは「さすがに躊躇した」(立石敬之・前FC東京GM)そうだし、J3参戦を危惧する声もあった。だがU-23チームでは参戦翌年にはエースとして対戦相手のターゲットとなり、横浜へのレンタル移籍を経た今年は、トップチームのスタメンを奪うと、瞬く間に不可欠の存在として牽引するようになった。もちろん久保の場合は、幼少時から図抜けた才能を発揮したからこそ、ここまで一気に到達した。ただしその理想的な足跡には、サッカー選手を健やかに育てるヒントが散りばめられている。
 
 まず何より久保のサッカーライフは、常にボールと同居していた。ボールを自在に操れるから顔が上がり、視野が確保され選択肢が増える。その基盤が、より良い環境で磨かれ、賢くて上手いと表現される選手になった。今年急成長中のフィジカルや物怖じしないメンタルは、決してスパイクもボールもない地獄の走り込み合宿や監督の罵声を浴びながらの罰走で培われたものではない。裏返せば、もはやサッカーを上達させるアイデアがなく、それを理不尽で補おうとするような部活は、選手の成長の足かせにしかならない。
 
 ヴェルディ一期生として長年育成にも携わって来た小見幸隆氏は言う。
「今までの天才たちは、指導者と意見が合わなくても強引に自分を通し、それでも潰れなかった選手だけが残った」
 
 要するに、選手の才能に追いつかない指導者は、天狗の鼻を叩く程度しか術を持たなかった。FC東京の施策が満点だったのかは判らない。しかし少なくともU-23チームをJ3に参戦させ、適切な経験値を踏ませていったという点で、天才少年がエースに育つまでの土壌を整えることには成功した。
 
 一方で久保は、必然的に日本代表内の競争原理を再考させるきっかけをもたらした。森保一監督は、堂安律、南野拓実、中島翔哉を2列目に抜擢し、この選択がチームに弾みをつけた。だが3人への信頼は、あまりに揺るぎなく、最近では安住へと変わりつつあった。特に今回の2戦でほぼ消えていた堂安が、エルサルバドル戦でフル出場した背景には、どこかで良い面を引き出してあげたいという指揮官の親心が働いていたようにも思える。
 
 だが現状でも久保は、プレーのバリュエーションやその精度、判断の効率など様々な面で十分三銃士に割って入る力を示している。ポジションを失った選手は奪い返すために奮起する。代表チームとは、こうした切磋琢磨で高めていく活動の場であるはずだ。
 
文●加部 究(スポーツライター)

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