【J1コラム】「落ちてはいけない」清水の王国のプライド

カテゴリ:Jリーグ

熊崎敬

2014年10月06日

「勝つと拍手がもらえるんだね」

王国の濃厚な空気の中で育ってきた大榎監督は、危機に直面しても内容を捨ててはいない。(写真は21節鹿島戦) (C) SOCCER DIGEST

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 Jリーグが始まったころ、清水には王国のアドバンテージがあった。地元産の代表クラスが揃っていた。だが当時を思えば、いまでは日本中がサッカー王国だ。Jクラブは10チームから52チームに膨れ上がり、王国の地位が脅かされている。無理もないことだ。
 それでも日本平でゲームを観ると、清水がいまも王国のプライドを保っていることが実感できる。
 良いプレー、悪いプレーへの観衆の反応が早く、大きいのだ。そこに長年、サッカーを育んできた街の歴史を見ることができる。05年の危機のときは、バックパスをするたびに日本平はため息に包まれ、選手たちは「あれはつらい」とこぼしていた。
 トップチームから地元出身者が減り、王国だったころの記憶を持つ選手は少なくなった。そんな中でもJ1の座を守り続けてきたのは、王国のプライドを失わないサポーターがいるからだろう。
 
 清水は落ちてはいけない。強くなければならない。そして美しいゲームを見せなければならない――。
 C大阪戦の清水は、ボールがダイナミックに動く伝統のゲームを繰り広げ、勝った。それはだれもが待ち望む、内容と結果だった。
 大榎監督は記者会見で「高い位置でボールを奪う回数を、もっと増やしていきたい」と語った。清水のプロ契約選手第1号であるレジェンドは、危機に直面しても内容を捨ててはいない。これが王国の意地。王国の濃厚な空気の中で育ってきた大榎には、ただ勝つだけの退屈なサッカーはやろうとしてもできないだろう。
 
 記者会見を終えた大榎監督に、記者団から拍手が送られた。
「勝つと拍手がもらえるんだね」
 清水のレジェンドは、笑みを浮かべながら会見場を後にした。
 
取材・文:熊崎敬
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