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自信、名誉、愛情……78歳のベルルスコーニ・ミラン名誉会長を「現場介入」に駆り立てるもの

カテゴリ:メガクラブ

サッカーダイジェストWeb編集部

2014年10月04日

サッカー界の流行を作った自負とミラン愛ゆえに“介入”へ!?

10月3日にはベルルスコーニ名誉会長と昼食会を行なったというインザーギ監督。今後も、自身の方針や信念とオーナーの意図がぶつかり合うことはたびたびあるだろうが、どうバランスを取っていけるか。 (C) Alberto LINGRIA

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 当時のミランでキーマンとなったのは、斬新なプレッシングサッカーをミラン、というよりはサッカー界に持ち込んだアリーゴ・サッキだ。ミランを世界一に押し上げ、後にイタリア代表監督も務めることになる智将は、ミランの監督に就任するまではセリエAでの指揮経験はなかった。チェゼーナのユースチームやリミニやパルマといった弱小クラブを率いたキャリアしかなかったが、コッパ・イタリアでミランを二度も破ったことで、ベルルスコーニ会長の心にその存在を強く焼き付けることに成功したのだった。
 
 元々、裸一貫で巨万の富を得たベルルスコーニ会長は自身の“目”の確かさを自負していたが、当初は誰もが懐疑的だったサッキ登用が大成功したことにより、ますますクラブオーナーとしての自身の手腕にも自信を持つようになった。実際、サッキのプレッシングサッカーはミランを強くしただけでなく、サッカー界全体のトレンドともなったのだ。
 
 トレンドといえば、「パンキーナ・ルンガ(長いベンチ)」、つまりターンオーバー制もミラン発のものである。89-90シーズン、ミランがセリエA、コッパ・イタリア、チャンピオズ・カップ、インターコンチネンタル・カップなど、すべてのタイトル獲得を狙ったものの、試合の多さによって選手が疲弊して失敗した際、ベルルスコーニ会長は「ならばもう1チーム作ればいい」と考えた。“単純な発想”とも言えるが、それまでそこに誰も考えは及ばず、また財政的にも当時はミランにしかできない施策でもあった。
 
 他にも、レアル・マドリーのラモン・メンドーサ会長(当時)とともに早い時期から欧州スーパーリーグ構想を提唱して間接的にチャンピオンズ・リーグ発足を後押しし、欧州サッカーの価値を格段に高めるのに、ベルルスコーニ会長とその同志とも言えるアドリアーノ・ガッリアーニ副会長が貢献したのは間違いのない事実である。
 
 こうした自負が、常に「自分は正しい」という自信につながり、また強引な手法を使ってでも企業を巨大化させ、政治家に転身して一国の首相にまで昇り詰めたように(そして政権を維持するために憲法までも改正してきた!)、信念を曲げることなく必ず目標を達成してきたという“強情さ”も相まって、現在の現場に対する考えの押しつけという行為にもつながっているのではないだろうか。
 
 イタリアの男性の最大の夢とは、自分の名前を冠した銘柄のワインを作ること、サッカークラブを所有すること、と一部ではいわれるが、最大の名誉を手にしたベルルスコーニ会長が、そのプライドの高さを考えても、みすみすそれを手放すはずがない。むしろ、再びブランド力を高めたいとすら考えているだろう。
 
 そして、過去に自身のビジネスや政治活動に利用することはあったとはいえ、ミランへの大きな愛情は確かにこの男のなかにある。たとえ一族の全員がクラブの売却を望んでも、ただひとりこれを拒否するのも、そのためだ。ビジネス目的だけでクラブを買収し、自身の好みで出場選手はおろか、伝統のあるチーム名やカラーまで変えるような愚を犯してサポーターから毛嫌いされているプレミアリーグの一部オーナー連中とは根本から違う。
 
 自らの手腕と嗅覚で長くミラニスタに至福の時を与えてきたという自負とプライド、そして愛情が、“いらぬ”口出しをさせてしまう。9月29日に78歳となっても衰えぬ情熱。政治の道がほぼ閉ざされた今、それはますますミランに注がれるだろう。もちろん、現場介入という形で、だ。
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