横浜――リーグ最多得点を誇る攻撃力は、後方からのビルドアップあってこそ
一発勝負の決勝戦を目前に控えても、指揮官は一切ブレない。
「注目度が高くても、やるべきことは変わらない。相手はプレッシャーをかけてくると思うが、自分たちが主導権を握るためには必然的にビルドアップすることになる」
湘南のプレスをロングボールで回避するのは難しくないだろう。戦況に応じた柔軟なプレー判断が、試合の趨勢を大きく変えて主導権を握るための有効な一手になるかもしれない。
だが、ポステコグルー監督と横浜はそれを良しとしない。あくまでもポゼッションサッカーを貫き、真っ向勝負で上回る。直近の公式戦2試合は、相手の果敢なプレスによってミスが散見され、自陣でのボールロストから失点した。ファイナルの相手は運動量に自信を持つ湘南だけに、前出のコメント通りに高い位置からプレスをかけてくるのは想像に難くない。
そこでポイントになるのが、ビルドアップ時にインサイド寄りのポジションを取る両SBだ。山中亮輔と松原健は高い位置での決定的な仕事を求められる以前に、まずはボランチのような位置取りで組み立てに参加する。
仲川輝人との縦関係で右サイドの攻略を目指す松原は「そこでプレスを回避して相手陣内に入るのが今の役割の醍醐味」と目を輝かせる。プレスの波をかわした先には、決定機につながるスペースが広がっている。ゴールやアシストではなく、起点となる働きでの貢献度は高い。
反対サイドには高いエリアで決定的な仕事をできる山中がいる。20日のJ1リーグ30節・G大阪戦では自身のパスミスから失点したが、迷いや戸惑いはない。
「自分たちは今年ずっとボールをつないできた。それを放棄することはあり得ない。一つひとつのプレーに神経を注いでやりたい」
ミスを恐れてプレー選択を変えるのではなく、どこまでも強気にボールをつなぎ、さらに高い位置でゴールに絡んでいく構えだ。
24日の練習では、GK飯倉大樹のゴールキックからショートパスをつなぎ、その際の立ち位置や役割を確認した。山中は「特に説明はないけど、選手個々で感じて考えればいいこと」と受け止めている。変わらずボールをつないでいくという指揮官からのメッセージであり、修正というよりも意識付けの意味合いが大きかった。
慌ててロングボールを放り込むのは愚の骨頂。ただしビルドアップ時のポジショニングについては再考の余地を残す。常にインサイド寄りにポジションを取れば格好の餌食になってしまう。
「サイドバックはスペースがあるポジションを取ればいい。中央にあれば中央、サイドにあればサイドに、状況に応じて判断することが大事になる」(ポステコグルー監督)。インサイド一辺倒ではなく、従来のタッチライン際も使い分けてプレスのベクトルを分散させたい。
リーグ最多得点を誇る攻撃力は、後方からのビルドアップあってこそ。迎えるファイナルは、勇気と練度が試される舞台になる。
文●藤井雅彦(ジャーナリスト)
【ルヴァンPHOTO】あの選手がチーム愛溢れる髪型に?!両チームの前日練習の様子をお届け!
「注目度が高くても、やるべきことは変わらない。相手はプレッシャーをかけてくると思うが、自分たちが主導権を握るためには必然的にビルドアップすることになる」
湘南のプレスをロングボールで回避するのは難しくないだろう。戦況に応じた柔軟なプレー判断が、試合の趨勢を大きく変えて主導権を握るための有効な一手になるかもしれない。
だが、ポステコグルー監督と横浜はそれを良しとしない。あくまでもポゼッションサッカーを貫き、真っ向勝負で上回る。直近の公式戦2試合は、相手の果敢なプレスによってミスが散見され、自陣でのボールロストから失点した。ファイナルの相手は運動量に自信を持つ湘南だけに、前出のコメント通りに高い位置からプレスをかけてくるのは想像に難くない。
そこでポイントになるのが、ビルドアップ時にインサイド寄りのポジションを取る両SBだ。山中亮輔と松原健は高い位置での決定的な仕事を求められる以前に、まずはボランチのような位置取りで組み立てに参加する。
仲川輝人との縦関係で右サイドの攻略を目指す松原は「そこでプレスを回避して相手陣内に入るのが今の役割の醍醐味」と目を輝かせる。プレスの波をかわした先には、決定機につながるスペースが広がっている。ゴールやアシストではなく、起点となる働きでの貢献度は高い。
反対サイドには高いエリアで決定的な仕事をできる山中がいる。20日のJ1リーグ30節・G大阪戦では自身のパスミスから失点したが、迷いや戸惑いはない。
「自分たちは今年ずっとボールをつないできた。それを放棄することはあり得ない。一つひとつのプレーに神経を注いでやりたい」
ミスを恐れてプレー選択を変えるのではなく、どこまでも強気にボールをつなぎ、さらに高い位置でゴールに絡んでいく構えだ。
24日の練習では、GK飯倉大樹のゴールキックからショートパスをつなぎ、その際の立ち位置や役割を確認した。山中は「特に説明はないけど、選手個々で感じて考えればいいこと」と受け止めている。変わらずボールをつないでいくという指揮官からのメッセージであり、修正というよりも意識付けの意味合いが大きかった。
慌ててロングボールを放り込むのは愚の骨頂。ただしビルドアップ時のポジショニングについては再考の余地を残す。常にインサイド寄りにポジションを取れば格好の餌食になってしまう。
「サイドバックはスペースがあるポジションを取ればいい。中央にあれば中央、サイドにあればサイドに、状況に応じて判断することが大事になる」(ポステコグルー監督)。インサイド一辺倒ではなく、従来のタッチライン際も使い分けてプレスのベクトルを分散させたい。
リーグ最多得点を誇る攻撃力は、後方からのビルドアップあってこそ。迎えるファイナルは、勇気と練度が試される舞台になる。
文●藤井雅彦(ジャーナリスト)
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