J1とJ2のレベルの差はいかほどか?町田ゼルビアが天皇杯で直面した現実

カテゴリ:Jリーグ

郡司 聡

2018年07月14日

天皇杯はJ1基準を知る貴重な実戦の場に

手痛い敗戦にも、中島は「次はやってやろうという気持ちにさせられた」と前を向いた。写真:徳原隆元

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 仮に何度か鹿島のボールを引っかけて効果的なカウンターを転じられそうな場面を作り出しても、前後左右に動かされた町田は体力を消耗しており、「そこから攻撃に転じることが難しかった」(土岐田)。
 
 町田の戦い方は良くも悪くも、一貫しているため、J2の対戦相手は対策を立てやすい。しかし、今季これまで町田と対戦してきたチームは、サイドチェンジを多用する戦い方や、町田のコンパクトな陣形を広げさせてスペースを突くプランで臨んでも、その攻略法をハイクオリティーで実践できるチームは少なかった。むしろ町田対策を意識し過ぎるあまり、それまで構築してきた自分たちの戦い方を見失って、自滅するチームが多い中、百戦錬磨の鹿島はJ1チームらしくその例外だった。
 
 攻守表裏一体のサッカーにおいて、攻守両面でボールに多くの人数が関わる相馬ゼルビアのサッカーは、自分たちが精神的優位性を得るために、相手に圧力をかけ続け、クオリティーで上回るチームに対しては、少しでもプレー精度を狂わせることで勝機を見い出す前提の下、成立している。それは、「サッカーはメンタルスポーツ」(相馬監督)を自認する指揮官ならではの勝利へのアプローチでもある。
 
 試合後の会見に臨んだ相馬監督は、「相手が余裕なくプレーできるようにする状況を作りつつ、決定機で仕留める機会を作りたかったが、重心が下がったことで相手の頭を下げさせることがなかなかできなかった。逆に我々のほうが構えさせられるような展開になってしまった」と試合全体を振り返っている。早い時間帯での失点が精神的優位性を保てない遠因となり、選手個々としても、チーム全体としても、前向きなプレー選択が次第にできなくなっていく。それが相手のパフォーマンスを効果的に引き出すことにつながってしまった感は否めない。
 
 1-5で敗れた直後のロッカールームでは、「強かった」「うまかった」「すごかった」と、鹿島のクオリティーを称賛する声が多く挙がったという。その一方でプロ歴15年以上を誇る中島裕希らは「次はやってやろうという気持ちにさせられた」と前を向いた。J1基準の中でも、ハイクオリティーに属する鹿島との真っ向勝負は、今後もJ1基準のチームを目指す町田にとって、実際の肌感覚を知る上でも、貴重な実戦の場となったに違いない。

取材・文●郡司 聡(フリーライター)
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