プレーの精度を上げて守備ブロック内を崩せるか。
日本が避けたいのは、ギリシャのサッカーに合わせてしまうことだ。相手の守備ブロックの外でパスを回すだけで、バイタルエリアに入り込めないような状況は相手の思うツボ。その状況からロングフィードを前線に送っても撥ね返されるのは目に見えている。
問題は、パスワークでブロックをこじ開けられるか。人とボールに強くプレッシャーをかけてくる相手に対し、怖がってパスを下げてばかりいたら、一向にゴールは奪えない。もちろん、無闇に縦パスを入れてボールを奪われるのは禁物だが、だからといってブロックの外側だけでボールを動かしたり、ロングフィードに頼ってしまえば脅威を与えられない。
相手との駆け引きを繰り返すなかで、バイタルエリアで香川や本田らがどれだけ前を向ける状況を作れるか、さらに言えば、彼らへ供給されるパスのクオリティーも求められる。ギリシャの守備網を崩すのは一筋縄ではいかず、一発で崩せる良薬があるわけでもない。ただ、プレーの精度を一つひとつ上げていけば、日本が思い描く展開へ持ち込めるはずだ。
効果的な攻略法のひとつとして、2列目の両サイドハーフが相手のギャップを突いたポジションを取れるかが挙げられる。両者とも基本布陣で臨むと仮定して話を進めるが、日本の4-2-3-1とギリシャの4-3-3のマッチアップだと、前線の4枚は相手のマークの餌食になりやすい。アンカーのツィオリスにトップ下の本田が封じられて、なおかつ両サイドハーフが外に張ってしまえば、相手の両SBに抑えられてしまい、身動きが取れない状況に陥りかねない。
これを回避するにはアクションを起こす必要があり、最も有効なのは、日本の両サイドハーフが、ツィオリスの両脇のスペースを上手く突くことだ。この動きによってマークにズレを生じさせることができれば、自ずとスペースが生まれ、2列目の攻撃力が活きてくる。同時に、長友らSBの攻め上がりを引き出して攻撃に厚みを加えられるだろう。
ギリシャに対してやりづらさを与えられるのは、前線を1トップ+2シャドーにした3-4-3。2シャドーへのマークが曖昧になるので、相手のSBを中へ絞らせてしまえば、ウイングバックがより活きてくるからだ。
ザッケローニ監督がシステムを変えて臨むとは考えにくいが、4-2-3-1で臨みつつも、試合中に3-4-3に変えるなど、フレキシブルに対応しても良い。
繰り返しになるが、日本の攻撃を機能させるには2列目がいかにボールを良い形で引き出し、前を向いてプレーできるかが鍵になる。そう考えると、足下のクオリティーが高い柿谷を1トップではなくサイドハーフに置き、岡崎に裏を狙わせる選択肢はありだと思う。相手にとってなにが一番嫌なのかを考えた時、もし自分が監督としてこの試合に臨んだならばそういう発想に行き着くだろう。
また、大柄な選手が多いギリシャが一番嫌がるのは、ドリブラータイプの選手とのマッチアップだ。今回選ばれた選手のなかで言えば、齋藤や大久保あたりになるが、大久保は、前線4枚のどこでもこなせるオールマイティーな選手で、経験も兼ね備える。均衡が破れない場面、または劣勢の状況で彼の能力に託してみるのも面白い。
解説:城福 浩(ヴァンフォーレ甲府監督)
1961年生まれ、徳島県出身。理論に基づいた的確な采配に定評があり、FC東京監督時代の09年にナビスコカップを制覇。12年より当時J2だった甲府の指揮官に就くと、1年でJ1昇格へ導く。今シーズンで3年目を迎えた。
取材・構成:橋本 啓(週刊サッカーダイジェスト)
※『週刊サッカーダイジェスト』6月3日号P26~27より抜粋。
問題は、パスワークでブロックをこじ開けられるか。人とボールに強くプレッシャーをかけてくる相手に対し、怖がってパスを下げてばかりいたら、一向にゴールは奪えない。もちろん、無闇に縦パスを入れてボールを奪われるのは禁物だが、だからといってブロックの外側だけでボールを動かしたり、ロングフィードに頼ってしまえば脅威を与えられない。
相手との駆け引きを繰り返すなかで、バイタルエリアで香川や本田らがどれだけ前を向ける状況を作れるか、さらに言えば、彼らへ供給されるパスのクオリティーも求められる。ギリシャの守備網を崩すのは一筋縄ではいかず、一発で崩せる良薬があるわけでもない。ただ、プレーの精度を一つひとつ上げていけば、日本が思い描く展開へ持ち込めるはずだ。
効果的な攻略法のひとつとして、2列目の両サイドハーフが相手のギャップを突いたポジションを取れるかが挙げられる。両者とも基本布陣で臨むと仮定して話を進めるが、日本の4-2-3-1とギリシャの4-3-3のマッチアップだと、前線の4枚は相手のマークの餌食になりやすい。アンカーのツィオリスにトップ下の本田が封じられて、なおかつ両サイドハーフが外に張ってしまえば、相手の両SBに抑えられてしまい、身動きが取れない状況に陥りかねない。
これを回避するにはアクションを起こす必要があり、最も有効なのは、日本の両サイドハーフが、ツィオリスの両脇のスペースを上手く突くことだ。この動きによってマークにズレを生じさせることができれば、自ずとスペースが生まれ、2列目の攻撃力が活きてくる。同時に、長友らSBの攻め上がりを引き出して攻撃に厚みを加えられるだろう。
ギリシャに対してやりづらさを与えられるのは、前線を1トップ+2シャドーにした3-4-3。2シャドーへのマークが曖昧になるので、相手のSBを中へ絞らせてしまえば、ウイングバックがより活きてくるからだ。
ザッケローニ監督がシステムを変えて臨むとは考えにくいが、4-2-3-1で臨みつつも、試合中に3-4-3に変えるなど、フレキシブルに対応しても良い。
繰り返しになるが、日本の攻撃を機能させるには2列目がいかにボールを良い形で引き出し、前を向いてプレーできるかが鍵になる。そう考えると、足下のクオリティーが高い柿谷を1トップではなくサイドハーフに置き、岡崎に裏を狙わせる選択肢はありだと思う。相手にとってなにが一番嫌なのかを考えた時、もし自分が監督としてこの試合に臨んだならばそういう発想に行き着くだろう。
また、大柄な選手が多いギリシャが一番嫌がるのは、ドリブラータイプの選手とのマッチアップだ。今回選ばれた選手のなかで言えば、齋藤や大久保あたりになるが、大久保は、前線4枚のどこでもこなせるオールマイティーな選手で、経験も兼ね備える。均衡が破れない場面、または劣勢の状況で彼の能力に託してみるのも面白い。
解説:城福 浩(ヴァンフォーレ甲府監督)
1961年生まれ、徳島県出身。理論に基づいた的確な采配に定評があり、FC東京監督時代の09年にナビスコカップを制覇。12年より当時J2だった甲府の指揮官に就くと、1年でJ1昇格へ導く。今シーズンで3年目を迎えた。
取材・構成:橋本 啓(週刊サッカーダイジェスト)
※『週刊サッカーダイジェスト』6月3日号P26~27より抜粋。