マドリーの場合は、着実に調子を上げているC・ロナウドがフィニッシャーで、ベンゼマがアシストの供給役。ベンゼマは「FWなのに得点力がない」と批判されるが、25節のアラベス戦でヒールキックでのトリッキーなアシストを見せたように、C・ロナウドやベイルのゴール演出役として十分機能している。

　対するヘタフェは、アンヘル・ロドリゲス（またはホルヘ・モリーナ）がキラーで柴崎岳がお膳立て役。ヘタフェが得意とするロングカウンターには本来、ポストプレーができるＪ・モリーナと得点力の高いアンヘルのコンビが組み合わせとしてベストだが（この場合は両方がフィニッシャー）、強敵相手のアウェーゲームとあって、勝点１をもぎ取ったカンプ・ノウでのバルサ戦同様、セカンドトップは守備のうまい柴崎を先発させるのではないか。

　レガネス（３-１）やアラベス（４-０）といった、ヘタフェと同じ堅守速攻型のチームに大勝しているマドリーだが、まったく隙がないわけではない。アラベス戦のように無失点で切り抜けた試合は、2018年に行なわれた15試合のうち３つしかなく、残り12試合はすべてにおいて失点しているのだ。

　ヘタフェとしては、柴崎以下10人が自陣に籠る形で攻撃をしのぎ、０-０の時間をなるべく長くしたい。そして、その形から手数も人数もかけず、２トップの力でカウンターに持ち込む。カウンターのパターンは、柴﨑のパートナーがＪ・モリーナになるかアンヘルになるかで変わってくる。

　Ｊ・モリーナの場合は、まず彼にボールを当て、そのリターンを受けた柴崎が裏のスペースへ走り込む第三者へスルーパスを送り込む形（ロングカウンター型）、アンヘルの場合は、ボールもらった柴崎が、その相棒へ直接スルーパスを通す形（ショートカウンター型）となる。いずれも決まれば、GKとの１対１を演出することになるだろう。

　マドリーにリードされた場合は、柴崎をMF（ボランチまたは左サイド）に動かしてＪ・モリーナとアンヘルの２トップを組ませる手もある。FWとMFを兼任できる器用さは柴崎独自のもの。ホセ・ボルダラス監督にとっては、使い方次第で攻守のバランスを４-２-３-１のようにも、４-５-１のようにもできる柴崎は、非常に使い勝手の良い選手と言えるだろう。
 
■堅守同士の“優勝争い”。鍵は少ないゴールチャンス

　首位のバルサと２位アトレティコによる“頂上決戦”の行方は、おそらく、互いの強力な２トップが相手の堅守を打ち砕けるかどうかで決まる。アトレティコのディエゴ・シメオネ監督は、コンパクトにスペースを埋め、バルサのパスワークを封じ、接戦に持ち込む戦い方を用いてくるだろう。

　ゴールチャンスはどちらもそう多くは作れないはずで、いずれかの２トップが２点を挙げた時点で勝敗は決するに違いない。バルサ、アトレティコがともに快勝を飾った25節では、バルサのスアレスが３点、メッシが２点、アトレティコのＤ・コスタが１点、グリエーズマンが３点と破壊力を見せつけたが、見ものはまずは両者の守り合い。それもポゼッションによる守備、非ポゼッションによる守備という対照的な守備戦術がかみ合う形となる。

　その中で、誰が単独で試合を決められるかと言えば、メッシしかいない。ドリブル、アシスト、シュート、FKといまのメッシは世界最高の選手の名にふさわしいレベルの違うプレーを見せており、彼の天才がひらめいたなら、シメオネにも、彼が鍛え抜いたリーガ最少失点11の守備陣にも、もはや止められないだろう。

提供：WOWOW