【現地発】英国で物議を醸すビデオ判定の有無――いま、審判に求められることは何か?

カテゴリ:ワールド

山中忍

2018年01月16日

“被害者”となったペジェグリーノがVARに…。

英国で少しずつ広まりつつあるVAR導入支持の声。良し悪しはあれど、世界的な流れを考えても早期導入が期待されるところだ。 (C) Getty Images

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 とはいえ、主審がイヤピースを通じ、ビデオ判定担当の審判員の助言を仰ぐだけでなく、自らピッチサイドに設置されたモニターで映像を確認するとなると、最終的なジャッジには幾何の時間がかかる。その間、10秒、20秒、30秒……と時間が経つにつれて、スタンドの雰囲気は冷めていく。
 
 ウェルベックがセスクともつれ、CKに逃れることに成功した89分の場面では、ビデオ判定の笛が鳴るまでにも間があったことから、見守る側には何を確認するのか自体が不明瞭な部分さえあった。加えて、30分のCK前の競り合いを含む、残る2回のビデオ判定の適用は不必要だったように思う。
 
 試さなければ、どうにもならない見方があるにしても、審判団は、微妙な場面に出くわす度に自分たちの身を守るような感覚でビデオ判定を多用してはいけない。「VAR、VAR!」と合唱する観衆のアピールに押されてはならないのだ。
 
 確認の必要性と最終判定を決する権限を持つ主審には、これまでにも増して、「試合をさばくのは自分だ」という威厳を胸に試合に臨んでもらいたい。
 
“被害者”となってしまったサウサンプトンの指揮官マウリシオ・ペジェグリーノは、チームがプレミアリーグで昨年11月末のマンチェスター・シティ戦から10試合も勝利に見放され、解任の噂も出ている。それでもこのアルゼンチン人監督は次のように言い放っている。
 
「プレッシャーは審判も同じ。常に最高のパフォーマンスが求められる中で、今日は彼ら自身が納得できずにいるだろう」
 
 ビデオ判定導入賛成の声が国内で強まった一戦の直後にもかかわらず、審判団を暗に批判せずに擁護したペジェグリーノのような堂々とした振る舞いを、レフェリーたちにも期待したい。
 
文●山中忍
 
【著者プロフィール】
やまなか・しのぶ/1966年生まれ、青山学院大学卒。94年渡欧。イングランドのサッカー文化に魅せられ、ライター&通訳・翻訳家として、プレミアリーグとイングランド代表から下部リーグとユースまで、本場のサッカーシーンを追う。西ロンドン在住で、ファンでもあるチェルシーの事情に明るい。
 
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