一瞬で状況を把握して最適なプレーを行なえる

12節終了時点で5位と好位置につけているボルシアMGで、ここまで4ゴールを挙げている。13節(25日)ではバイエルンと対戦。首位チーム相手に、シュティンドルは違いを生み出せるか。 (C) Getty Images
ボルシアMGでの、長年コンビを組むブラジル人FWラファエウとの息の合ったコンビネーションは、ブンデスリーガ全体でもトップレベルにある。ともに典型的なFWタイプではないが、流動的な位置取りでも常に適切な距離感を保ち、ペナルティーエリア付近でのダイレクトプレーの連続で、堅固な守備も突破していく。
そしてエリア付近でボールを受ける時、シュティンドルは最も輝きを放つ。ほとんどのゴールは、インサイドキックでサイドに流し込んだもので、インステップで思い切り蹴り込んだり、派手なフェイントやシュートを見せたりすることはない。
だが、アイデアを具現化するプレー精度が非常に高く正確なのだ。
10月のブンデスリーガ月間最優秀ゴールに選ばれた一発も、そうだった。エリア内で高く浮いた相手のクリアボールを身体の後ろにトラップしながら、素早く相手DFと入れ替わると、角度のないところからGKの手先をかわして逆サイドのネットを見事に射抜いた。
前述のフランス戦でのゴールもしかり。ゲッツェからのダイレクトパスに呼応して相手守備の裏に抜け出すと、パーフェクトなトラップでボールを運び、相手GKの動きを見て冷静に、インサイドでゴール右へと流し込んだ。
一瞬で状況を把握し、最適なプレーを行なう。それがシュティンドルの真骨頂だ。
選手としてだけではなく、人間としても素晴らしい。熱狂的なファンからすれば、自身が愛するクラブから移籍していく選手を好ましく思わないのが通常だろう。だが、シュティンドルに対しては違うようだ。
ハノーファーのファンは、今も忘れていない。2014-15シーズン、降格の危機に瀕していたクラブを残留に導いたのは、紛れもなくシュティンドルだった。ハノーファーの地元記者の多くが、大袈裟ではなく「シュティンドルがひとりでチームを救ってくれた」と絶賛するほどの活躍とクラブ愛を見せてくれた。
会長のマルティン・キントは「素晴らしい選手で、素晴らしい性格で、素晴らしい人間だ。最後の最後まで、ハノーファーのために戦ってくれるのは分かっていた。非常に印象的なかたちで、それを証明してくれた」 と、最後までシュティンドルを褒め称えていた。
代表をファミリーと考えるレーブ監督にとっても、シュティンドルの人間性は間違いなく大きな意味を持つ。今のパフォーマンスが維持されれば、来夏、ロシアの地で彼のプレー見られる可能性は非常に高い。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。
そしてエリア付近でボールを受ける時、シュティンドルは最も輝きを放つ。ほとんどのゴールは、インサイドキックでサイドに流し込んだもので、インステップで思い切り蹴り込んだり、派手なフェイントやシュートを見せたりすることはない。
だが、アイデアを具現化するプレー精度が非常に高く正確なのだ。
10月のブンデスリーガ月間最優秀ゴールに選ばれた一発も、そうだった。エリア内で高く浮いた相手のクリアボールを身体の後ろにトラップしながら、素早く相手DFと入れ替わると、角度のないところからGKの手先をかわして逆サイドのネットを見事に射抜いた。
前述のフランス戦でのゴールもしかり。ゲッツェからのダイレクトパスに呼応して相手守備の裏に抜け出すと、パーフェクトなトラップでボールを運び、相手GKの動きを見て冷静に、インサイドでゴール右へと流し込んだ。
一瞬で状況を把握し、最適なプレーを行なう。それがシュティンドルの真骨頂だ。
選手としてだけではなく、人間としても素晴らしい。熱狂的なファンからすれば、自身が愛するクラブから移籍していく選手を好ましく思わないのが通常だろう。だが、シュティンドルに対しては違うようだ。
ハノーファーのファンは、今も忘れていない。2014-15シーズン、降格の危機に瀕していたクラブを残留に導いたのは、紛れもなくシュティンドルだった。ハノーファーの地元記者の多くが、大袈裟ではなく「シュティンドルがひとりでチームを救ってくれた」と絶賛するほどの活躍とクラブ愛を見せてくれた。
会長のマルティン・キントは「素晴らしい選手で、素晴らしい性格で、素晴らしい人間だ。最後の最後まで、ハノーファーのために戦ってくれるのは分かっていた。非常に印象的なかたちで、それを証明してくれた」 と、最後までシュティンドルを褒め称えていた。
代表をファミリーと考えるレーブ監督にとっても、シュティンドルの人間性は間違いなく大きな意味を持つ。今のパフォーマンスが維持されれば、来夏、ロシアの地で彼のプレー見られる可能性は非常に高い。
文:中野 吉之伴
【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日秋田生まれ。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。地域に密着したアマチュアチームで様々なレベルのU-12からU-19チームで監督を歴任。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2016-17シーズンからドイツU-15・4部リーグ所属FCアウゲンで監督を務める。「ドイツ流タテの突破力」(池田書店)監修、「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)執筆。最近は日本で「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている。