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【小宮良之の日本サッカー兵法書】武器は必要だが、それを有効とする土台はでき上がっているか!?

カテゴリ:連載・コラム

小宮良之

2017年11月22日

練習を重ねるにつれて「言葉に引っ張られる」

スペイン代表としての良さを十分に引き出しながらも、チーム作りや采配では堅実さを失わないロペテギ監督。現役時代は代表にも名を連ねたGKだった51歳はここまで、しっかり結果を出している。 (C) Getty Images

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「トレーニングしなければならないのは、攻めている時、守っている時のポジションや、選手同士の距離感や身体の向きという基本だ。それが結果として、トランジッションで有利になる」
 
 フットボールにおいては、ボールを持っている時、ボールを持っていない時、そのどちらかしかない。トランジッションというのは、その瞬間を切り取ったものにすぎないと、バスクの指導者は言う。トランジッションを成功させられるか否かの鍵は、より根本的な部分にある。
 
 守っている時には攻める準備を整え、攻めている時には守る準備を整える。ポジショニングやタイミングを共有するトレーニングで、スペースを11人でどう共有するか。各自が持ち場を守りながら、「カバーもできるし、前にも出られる」という状況を整理するのが、戦術的トレーニングだ。
 
 ところが、練習を重ねるにつれ、どうしても指導者は「言葉に引っ張られる」という。例えばプレッシング、例えばリトリート。プレッシングのためのプレッシング、リトリートのためのリトリートになってしまうのだ……。
 
 先日、日本代表は親善試合でブラジル代表と対戦し、力の差を見せつけられた。
 
 日本は強度の高いプレッシングを、試合開始から行なった。相手の鼻っ面に一撃を食らわしたわけだが、その後は、ブラジル人選手の狭いスペースでの技術に圧倒された。
 
 プレッシングに固執した結果、前の選手が突出しすぎ、中盤はぽっかりと空いてしまった。スキルの高い選手が前線にいるだけに、バックラインも容易にラインを上げられない。結果、裏の広大なスペースを埋めるためにズルズルと下がり、前のスペースを使われ、鋭いカウンターを浴びた。
 
 言い換えれば、スペースの陣取り合戦で自ら墓穴を掘り、一敗地にまみれたのである。
 
 プレッシングとはそもそも、相手のスペースを圧縮して優位に立つ戦術である。つまり、敵の攻撃に蓋ができない場合、やり方を変えなければならない。もしくは圧縮するスペースを変更すべきだ。
 
 臨機応変に戦えるか。
 
 指導者は、細部のキーワードを掘り下げるのではなく、ベースを分厚くするしかない。
 
文:小宮 良之
 
【著者プロフィール】
こみや・よしゆき/1972年、横浜市生まれ。大学在学中にスペインのサラマンカ大に留学。2001年にバルセロナへ渡りジャーナリストに。選手のみならず、サッカーに全てを注ぐ男の生き様を数多く描写する。『おれは最後に笑う』(東邦出版)など多数の書籍を出版しており、今年3月にはヘスス・スアレス氏との共著『選ばれし者への挑戦状 誇り高きフットボール奇論』(東邦出版)を上梓した。
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