【識者コラム】ハリル監督が日本代表にもたらした「一戦一型」という観点

カテゴリ:日本代表

二宮寿朗

2017年10月11日

「このやり方もアリだ」と説得力を持たせたのは事実。

代表チームの活動時間は限られる。そうした点からも、ハリルホジッチ監督の手法は理に適っていると言える。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

画像を見る

 相手にボールを持たせたうえで、奪取からの速い攻撃でゴールを目指す。そうした特色はこれまでの日本になかったもので、新たな引き出しとなっているのは言うまでもない。
 
 アジアでは強者でも、世界の舞台では弱者になる。そのギャップが埋められないなかで、ハリルホジッチ監督はアジアでの戦いから強者の顔を捨てた。世界で強者になろうとするチャレンジがなければ、失われた2年半になるという意見もあるだろう。だが一方で、指揮官が己のやり方をプレゼンテーションし、ワールドカップ予選突破というひとつの成功体験を得たからこそ、「このやり方もアリだ」と説得力を持たせることができているのも事実だ。
 
 実際、今の代表チームは昔に比べて活動期間が短くなっている。海外組が増え、しかもプレーしている国はバラバラだ。そんな状況下において、主力選手を固定してしまうリスクは小さくない。採用する戦術に合わせてコンディションの良い選手を選ぶというのは、理に適っている。
 
 ただ、ハリルホジッチ監督の手法にすべて賛成というわけではない。これまで積み上げてきた財産を、もっと使ってもいいのに、とは思う。
 
 例えばザッケローニ監督は、メンバーをある程度固定して戦うことで、連係を高めた。特に香川真司が左、本田圭佑が中央、岡崎慎司が右という配置にこだわり、左で崩して、右で仕留める形を築き上げている。
 
 ならばオプションとして、右サイドに岡崎を起用するのも手だと思うのだが、ハリルホジッチ監督は頑なにそこはやろうとしない。ザッケローニ監督やハビエル・アギーレ監督が試した組み合わせの転用を、考えてみてもいいのではないか。引いた相手を崩す攻撃に課題を残しているのは確かなのだから、温故知新も有益であるはずだ。
 
 ハリルホジッチ流の手法は、新しい観点をもたらしたという意味でも、日本サッカーの未来に有益だと信じている。ただ、それもワールドカップ本大会で結果を出してこそ。「一 戦一型のカメレオン」で成功を収めて初めて、引き出しを増やした日本サッカーが、次のステップに進んだと言えるのではないだろうか。
 
文:二宮寿朗(スポーツライター)
 
※『サッカーダイジェスト』9月28日号(同9月14日発売)「THE JUDGE」より抜粋
 
【関連記事】
【識者の視点】“小さな反乱を起こせる”小林祐希はハリルに重要なヒントを与えたか
「香川真司はなぜ日本代表だとパッとしないのか?」の質問にハリルの見解は…
【藤田俊哉の目】NZ戦で元同僚が放った世界基準の一発! 反省は必要だが予行演習なら収穫だ
小林祐希が語る“パスの流儀”「パスを受けた選手がミスしたら自分の責任」
3トップが抱えたもどかしさ―― 久保裕也は「自分でシュートに」「もっと良い距離感で」

サッカーダイジェストTV

詳細を見る

 動画をもっと見る

Facebookでコメント

サッカーダイジェストの最新号

  • 週刊サッカーダイジェスト なでしこJに続け!
    4月10日発売
    U-23日本代表
    パリ五輪最終予選
    展望&ガイド
    熾烈なバトルを総力特集
    詳細はこちら

  • ワールドサッカーダイジェスト ガンナーズを一大特集!
    5月2日発売
    プレミア制覇なるか!?
    進化の最終フェーズへ
    アーセナル
    最強化計画
    詳細はこちら

  • 高校サッカーダイジェスト 高校サッカーダイジェストVo.40
    1月12日発売
    第102回全国高校選手権
    決戦速報号
    青森山田が4度目V
    全47試合を完全レポート
    詳細はこちら

>>広告掲載のお問合せ

ページトップへ