「このやり方もアリだ」と説得力を持たせたのは事実。
相手にボールを持たせたうえで、奪取からの速い攻撃でゴールを目指す。そうした特色はこれまでの日本になかったもので、新たな引き出しとなっているのは言うまでもない。
アジアでは強者でも、世界の舞台では弱者になる。そのギャップが埋められないなかで、ハリルホジッチ監督はアジアでの戦いから強者の顔を捨てた。世界で強者になろうとするチャレンジがなければ、失われた2年半になるという意見もあるだろう。だが一方で、指揮官が己のやり方をプレゼンテーションし、ワールドカップ予選突破というひとつの成功体験を得たからこそ、「このやり方もアリだ」と説得力を持たせることができているのも事実だ。
実際、今の代表チームは昔に比べて活動期間が短くなっている。海外組が増え、しかもプレーしている国はバラバラだ。そんな状況下において、主力選手を固定してしまうリスクは小さくない。採用する戦術に合わせてコンディションの良い選手を選ぶというのは、理に適っている。
ただ、ハリルホジッチ監督の手法にすべて賛成というわけではない。これまで積み上げてきた財産を、もっと使ってもいいのに、とは思う。
例えばザッケローニ監督は、メンバーをある程度固定して戦うことで、連係を高めた。特に香川真司が左、本田圭佑が中央、岡崎慎司が右という配置にこだわり、左で崩して、右で仕留める形を築き上げている。
ならばオプションとして、右サイドに岡崎を起用するのも手だと思うのだが、ハリルホジッチ監督は頑なにそこはやろうとしない。ザッケローニ監督やハビエル・アギーレ監督が試した組み合わせの転用を、考えてみてもいいのではないか。引いた相手を崩す攻撃に課題を残しているのは確かなのだから、温故知新も有益であるはずだ。
ハリルホジッチ流の手法は、新しい観点をもたらしたという意味でも、日本サッカーの未来に有益だと信じている。ただ、それもワールドカップ本大会で結果を出してこそ。「一 戦一型のカメレオン」で成功を収めて初めて、引き出しを増やした日本サッカーが、次のステップに進んだと言えるのではないだろうか。
文:二宮寿朗(スポーツライター)
※『サッカーダイジェスト』9月28日号(同9月14日発売)「THE JUDGE」より抜粋
アジアでは強者でも、世界の舞台では弱者になる。そのギャップが埋められないなかで、ハリルホジッチ監督はアジアでの戦いから強者の顔を捨てた。世界で強者になろうとするチャレンジがなければ、失われた2年半になるという意見もあるだろう。だが一方で、指揮官が己のやり方をプレゼンテーションし、ワールドカップ予選突破というひとつの成功体験を得たからこそ、「このやり方もアリだ」と説得力を持たせることができているのも事実だ。
実際、今の代表チームは昔に比べて活動期間が短くなっている。海外組が増え、しかもプレーしている国はバラバラだ。そんな状況下において、主力選手を固定してしまうリスクは小さくない。採用する戦術に合わせてコンディションの良い選手を選ぶというのは、理に適っている。
ただ、ハリルホジッチ監督の手法にすべて賛成というわけではない。これまで積み上げてきた財産を、もっと使ってもいいのに、とは思う。
例えばザッケローニ監督は、メンバーをある程度固定して戦うことで、連係を高めた。特に香川真司が左、本田圭佑が中央、岡崎慎司が右という配置にこだわり、左で崩して、右で仕留める形を築き上げている。
ならばオプションとして、右サイドに岡崎を起用するのも手だと思うのだが、ハリルホジッチ監督は頑なにそこはやろうとしない。ザッケローニ監督やハビエル・アギーレ監督が試した組み合わせの転用を、考えてみてもいいのではないか。引いた相手を崩す攻撃に課題を残しているのは確かなのだから、温故知新も有益であるはずだ。
ハリルホジッチ流の手法は、新しい観点をもたらしたという意味でも、日本サッカーの未来に有益だと信じている。ただ、それもワールドカップ本大会で結果を出してこそ。「一 戦一型のカメレオン」で成功を収めて初めて、引き出しを増やした日本サッカーが、次のステップに進んだと言えるのではないだろうか。
文:二宮寿朗(スポーツライター)
※『サッカーダイジェスト』9月28日号(同9月14日発売)「THE JUDGE」より抜粋