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【指揮官コラム】鹿児島ユナイテッドFC監督 三浦泰年の『情熱地泰』|ボルト、ジダン、ヒフミンに感じた散り際の拘り

カテゴリ:連載・コラム

サッカーダイジェストWeb編集部

2017年08月23日

ジダンもヒフミンも最後まで感情を剝き出しにして戦った。

ジダンの最後の試合となったドイツW杯決勝のイタリア戦。フランスの英雄の引退試合は思いもよらぬ展開に。(C) Getty Images

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 2006年のドイツ・ワールドカップでのジダンの現役最後の試合となった決勝戦。延長後半で引退まであとわずか。フランス代表対イタリア代表のゲームは、なかなかゴールをこじ開けることが出来ない辛抱合戦となった。
 
 そして、ジタンはイタリアのDFマテラッツィの挑発に乗って頭突き。レフェリーからのレッドカードで「一発退場」。ロッカールームを下がるジダンは、ワールドカップを横目に引退。悔しい最後の試合となった。
 
 最近では将棋界で、とても心を打たれた瞬間があった。
 
 それは15歳の藤井聡太4段が連続勝利記録を伸ばす時期に、「引退」を迎えることになった加藤一二三九段。将棋の世界の詳しいことは知らないが、負けたら引退という状況であったらしく、加藤一二三こと「ヒフミン」は敗戦と同時に引退。
 
 そして将棋では対局後、対戦相手と対局を振り返らなければいけないのをキャンセルし退席したのだ。
 
 僕は、このシーンをテレビで見て、少し嬉しくなった。
 
 試合に負けて引退する――。話している場合か……。きっとサッカーで言えば、挨拶もせず悔しくて足早に控室へ、そしてメディアのミックスゾーンを無視してバスへ乗り込んだようなものか。
 
 棋士でも感情があり、戦っているんだなと共感できた。
 
 そしてボルトに話を戻せば、彼は最後までフィールドで倒れるまで走り続けた。正しくボロボロになりながら……。
 
 いや、それはボロボロではない! 一番格好良い「ラストレース」だ。順位はどうであれ、周りがどう評価しようが、自分が人生の中で感謝し続けていくであろうというモノを、とことんやり続けた証。それが分かる最後の試合(引退試合)は美しい。
 
 一方ジダンは最後まで母国のために本気で闘い続けていたのだ。ギリギリの所で必死にやっていたら一瞬ミスする事もある。
 
 誰が何を言おうが、僕は彼らを尊敬し敬意を表わせる。真剣にやれば何かは起こる。良い事も悪い事も。
 
 日本人はフェアプレーを好み、感情を剥き出しにする事を好まない。とりわけ自国の選手には慎ましさを求めたがるが、プロの世界は一般人とは違う基準がある。これはなかなか難しい価値観なのであろう。
 
 本気でやれば人の期待を裏切ることもある。真剣にやればやるほど上手くいかない、ミスしてしまう時もある。
 
 人は恥をかいて成長していくのであろう。恥をかくのが怖くて、失敗するのを恐れて全力を出さない。いや、出せないのかもしれない。
 
 最後のレースで倒れてまでも真剣に本気で走り続けたボルト。最後の試合で頭突きしてでもプライドでサッカーをしたジダン。そして最後の試合で若い棋士を無視して帰ってしまったヒフミン。
 
 彼らから学ぶことは多い。もっともっとやらなければいけない、そう感じた。
 
2017年8月22日
三浦泰年
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