「もうすぐ辞めるかもしれない」と言っている監督の下で結束するのは難しい。
セリエAのフィオレンティーナで、 こんな経験をした。クラブハウスの一室でインタビューに答えた監督は、相手がイタリア語で記事を書かないことから警戒心を解き「今、私は本当に危機的な状況に置かれているんだ」と、本音を吐露した。
ところが 次に臨んだ記者会見では、矢継ぎ早に浴びせられる厳しい質問に対し「まったく危機的だとは考えていない」と主張し続けるのだ。結局、数日後に監督は更迭された。監督はクビになる瞬間まで嘘でもファイティングポーズを取り続け、クラブは火種が広がらないうちに手を打った。
しかし浦和では、前監督が1か月間以上も愚痴をこぼし続けた。これは7月15日、ドルトムント戦後のコメントである。
「日本で12シーズン目を迎え、多くの指導者が私のやり方に共感してくれるようになった。だが多くのメディアは、世界的にも稀なアイデアに富んだサッカーを理解してくれない。だから私がここにいるのは、あまり長くないのかもしれない」
サッカー人である監督が、闊達に私見を述べるのは好ましいことだと思う。だがクラブ側は、解任を決める権利を主張するなら、同時に義務の遂行も求めていくべきだ。メディアに対して再三「もうすぐ辞めるかもしれない」と言っている監督の下で、チームが結束して反撃に向かうのは難しい。またそれ以前に、監督自身をサポーターの前に立たせて収拾を図ろうとするようでは、クラブとしての危機管理が体を成していない。
監督交代は応急措置に過ぎない。 大半の病気の根治には、体質改善が不可欠だ。そして屈指の人気クラブが健やかでなければリーグも危うい。
文:加部 究(スポーツライター)
ところが 次に臨んだ記者会見では、矢継ぎ早に浴びせられる厳しい質問に対し「まったく危機的だとは考えていない」と主張し続けるのだ。結局、数日後に監督は更迭された。監督はクビになる瞬間まで嘘でもファイティングポーズを取り続け、クラブは火種が広がらないうちに手を打った。
しかし浦和では、前監督が1か月間以上も愚痴をこぼし続けた。これは7月15日、ドルトムント戦後のコメントである。
「日本で12シーズン目を迎え、多くの指導者が私のやり方に共感してくれるようになった。だが多くのメディアは、世界的にも稀なアイデアに富んだサッカーを理解してくれない。だから私がここにいるのは、あまり長くないのかもしれない」
サッカー人である監督が、闊達に私見を述べるのは好ましいことだと思う。だがクラブ側は、解任を決める権利を主張するなら、同時に義務の遂行も求めていくべきだ。メディアに対して再三「もうすぐ辞めるかもしれない」と言っている監督の下で、チームが結束して反撃に向かうのは難しい。またそれ以前に、監督自身をサポーターの前に立たせて収拾を図ろうとするようでは、クラブとしての危機管理が体を成していない。
監督交代は応急措置に過ぎない。 大半の病気の根治には、体質改善が不可欠だ。そして屈指の人気クラブが健やかでなければリーグも危うい。
文:加部 究(スポーツライター)