シオからナオへ――。FC東京で濃密な11年間をともにした戦友へのメッセージ

カテゴリ:Jリーグ

古田土恵介(サッカーダイジェスト)

2017年08月12日

「ピッチに立つ姿を見せるのが、今のナオの使命」

2009年にナビスコカップ(現ルヴァンカップ)を制覇したFC東京。石川(写真左端)と塩田(写真右端)の笑顔からは充実感が見て取れる。写真:田中研治

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 塩田は石川から直接、引退することを知らされていた。時に神妙に、時に笑顔を浮かべて、昔を懐かしみ、未来へと気持ちを馳せながら言葉を紡いでくれた。
 
「6月下旬ぐらいだったかな。ナオから電話がきた。『社長や監督に今日伝えたわ』って。まだシーズンは半年ほど残っていたから、周りがどう言うかは分からないけど、自分としては『やっぱり1分でもピッチに立ってもらいたい』という心情だった。
 
 昨年もかなり悩んでいたのは知っているから。今季の復帰に向けて頑張ろうって決断して、現役を続けた。『このままじゃ』という想いで毎日戦っていたはずだけど、あいつなりにプロとして手応えを感じられなくなってしまったのかな……。
 
 プレーできなくて申し訳ないという気持ちと、それでもピッチに立ちたいという気持ち。葛藤し続けていたんだと思う。
 
 11年も一緒にFC東京でプレーして、俺らにしか分からないこともたくさんある。それでもチームにナオがどれだけのものを残したか、日本サッカー界にどれだけ貢献したかはみんなも理解しているはず。
 
 最後にピッチに立つ姿を見せるのが、今のナオの使命だよ。心からそれが叶ってほしいと願っている。だから『あとちょっとの間かもしれないけど、頑張って復帰してくれよ』って。そしたら、『やるしかないっしょ!』って言ってたから。
 
 あいつはずっと同世代のトップランナーだった。09年までFC東京にいたモニ(茂庭照幸)とか、(前田)遼一とか(大久保)嘉人とかもね。みんな五輪代表に選ばれて、日本代表でもプレーしている。
 
 アテネ五輪のメンバー選考にかすりもしなかった俺からしたら、雲の上の存在。でも同じJ1のピッチで戦った仲間だと思ってる。そんな同世代が現役生活から退くのは、やっぱり寂しい。
 
 ただ、プロサッカー選手としての活動を終えた次の人生のほうが長くて、先にそっちに進んで頑張っている姿を見ると、勇気が湧く。だから、まだプロ生活をしている仲間にも、違う道に行った仲間にも頑張ってほしいし、自分も負けないようにしたい」
 
 ナオのラストシーズン――。シオは「今までお疲れ」と声をかけなかった。「Twitterにも書いたけど、今季が終わってから言いたいなと思って」。では、今だったら何を伝えるのか。
 
「まぁ、『がんばれ』って感じ」。シオからナオへ。たった4文字の短過ぎるフレーズには、ふたりだけが知る、お互いへのリスペクトが濃縮されている。
 
取材・文:古田土恵介(サッカーダイジェスト編集部)
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